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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (120 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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ることも指摘されている。
飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、冠動脈疾患死亡率、冠動脈疾患発症率、脳梗塞
発症率、2 型糖尿病発症率との関連をコホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、
いずれも有意な関連は認められなかったという報告や 14)、飽和脂肪酸摂取量の増加が総死亡リスクの
上昇と関連する 15)という報告がなされており、結果が一貫していない。期間が 2 年以上の介入研究の
メタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸摂取量を減少させると循環器疾患死亡率の有意な低下は認めなか
ったものの、循環器疾患発症リスクの減少を認めた 16)。飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えた
場合、コホート研究で検討した結果を統合したメタ・アナリシスでは、冠動脈性心疾患発症率の有意
な減少を報告している 15)。さらに、介入研究を統合したメタ・アナリシス 16)で、飽和脂肪酸を多価不
飽和脂肪酸に置き換えた場合、循環器疾患発症率の有意な減少が観察されている。一方で、コホート
研究のメタ・アナリシスによると、飽和脂肪酸の摂取量と脳出血及び脳梗塞の発症リスクは負の関連
を認めたが、感度解析の結果から、地域によって結果にばらつきがある可能性が示唆されている 17)。
小児では、生活習慣病の発症や死亡との関連から、飽和脂肪酸摂取について検討するのは適切では
ない。ただし、メタ・アナリシスによると、小児でも飽和脂肪酸摂取量を減少させると血中総コレス
テロール及び LDL-コレステロールが有意に低下することが認められている 18)。
以上より、循環器疾患の発症及び死亡に直結する影響は十分ではないものの、その重要な危険因子
の 1 つである血中総コレステロール及び LDL-コレステロールへの影響は成人、小児ともに明らかで
あり、飽和脂肪酸については目標量を設定すべきであると考えられる。
しかしながら、両者の間に明確な閾値の存在を示した研究は乏しく、飽和脂肪酸摂取量をどの程度
に留めるのが好ましいかを決める科学的根拠は十分ではない。
4-3-1-2 目標量の策定方法
・成人・高齢者(目標量)
上記で述べたように、既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難である。そこで、
日本人が現在摂取している飽和脂肪酸量を測定し、その中央値をもって目標量(上限)とすることに
した。世界保健機関(WHO)をはじめとする国際的なガイドラインでは上限を最大 10%エネルギー
としているガイドラインが多いが、諸外国における摂取量分布を鑑みて飽和脂肪酸摂取量を 10%エネ
ルギーまでに減らすことが推奨されている 19,20)。日本人の摂取量の中央値は上述のとおり 10%エネル
ギーを下回っているのが現状である。このため、最近の調査で得られた摂取量(中央値)を基に活用
の利便性を考慮し、目標量(上限)を 7%エネルギーとした。
・小児(目標量)
上記で述べたように、既存の研究成果を基に目標量(上限)を算定することは困難である。そこで、
日本人の飽和脂肪酸の摂取量の中央値をもって目標量(上限)とすることとした。
最近の調査で得られた摂取量(中央値)を基に、活用の利便性を考慮し、目標量(上限)を男女共
通の値として、3~14 歳は 10%エネルギー、15~17 歳は 9%エネルギーとした。
1~2 歳については、この年齢区分における循環器疾患危険因子との関連を検討した研究が少なか
ったこと、日本人の摂取量の実態に関する信頼度の高い報告はまだ少なく、その実態はまだ十分に明
らかにされていないと考えられたことなどを考慮して、今回は目標量の設定を見送った。

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