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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (279 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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化は進行するが、インスリン感受性が亢進し、耐糖能が改善することが報告されている 178)。実際、ギ
リシャでの研究では、メタボリックシンドロームの者は、健康な者に比べて有意に血清リン濃度が低
く、メタボリックシンドロームの該当項目が多いほど、血清リン濃度が低かったことが報告されてい
る 179)。また、韓国の研究では、血清リン濃度は心血管疾患の発症リスクと正の関連、BMI、空腹時血
糖値、HOMA-IR、血清トリグリセライド値、血圧とは負の関連が認められ、血清リン濃度が低いこと
はメタボリックシンドロームの発症リスクを高めることが示唆されている 180)。一方で、健康な人と
糖尿病患者を比較すると、糖尿病患者で血清リン濃度が高く、血清リン濃度が高いことは糖尿病や心
血管疾患のリスクではないかとの報告もある 181)。糖尿病の発症予防あるいは重症化予防に対するリ
ン摂取の影響については十分なデータがなく、疾患予防のためのリン摂取量を設定することは、現時
点では困難である。
・高血圧
血清リン濃度と高血圧については、血清リン濃度が高いほど、血圧が低いという報告がある 173,174)。
高血圧の発症予防及び重症化予防のためのリン摂取量を算定することは困難と考えられる。
・慢性腎臓病(CKD)
腎臓は、リンやカルシウムの代謝調節に重要な役割を果たしており、腎機能の低下に伴って生じる
リン・カルシウム・骨代謝異常は、CKD-mineral and bone disorder(CKD-MBD)と総称されている。
早期 CKD 患者では、軽度の腎機能低下による相対的なリン負荷の増加に対し、代償性に FGF23 や
PTH が上昇することで単位ネフロン当たりのリン排泄量が増加するため、CKD が高度に進行するま
で血清リン濃度は基準範囲に保持される。実際に、FGF23 は CKD ステージ 2 より既に上昇し 182)、
CKD の予後と相関することが知られている 183,184)。したがって、CKD 早期からリンの負荷を制限す
ることが、CKD の進行や CKD-MBD を抑制するために好ましいという考えもある。しかし、CKD の
どの段階からどの程度リンを制限すれば良いかについての科学的根拠は十分ではない。
3-3-2 目標量の策定方法
生活習慣病の発症予防のためのリンの目標量を算定するための科学的根拠は十分ではなく、今回は
設定しなかった。

4 生活習慣病の重症化予防
生活習慣病の重症化予防のためのリンの量を算定するための科学的根拠は十分ではなく、今回は設
定しなかった。

5 今後の課題
様々な食事パターンを想定した食品添加物を含むリン摂取量の実態調査が必要である。また、リン
の必要量の算定のために、生体指標を用いた日本人のリン摂取量に関するデータが必要である。

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