「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (401 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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Cardiovascular Health Study(CHS)基準が広く受け入れられている。表1に挙げた 5 項目、すなわち、
①体重減少、②主観的疲労感、③日常生活活動量の減少、④身体能力(歩行速度)の減弱、⑤筋力(握
力)の低下のうち 3 項目以上が当てはまればフレイルとし、1~2 項目が当てはまる場合はフレイル前
段階(プレフレイル)と定義する 47)。一方、加齢に伴う脆弱性の亢進は、必ずしも身体機能の低下の
みが原因ではない。認知的フレイル 48)、社会的フレイル 49)、オーラルフレイル(口腔機能の脆弱)50)
など、フレイルの概念を拡張した広義の考え方もある。
1-3-4 フレイルとサルコペニアの関連
サルコペニアは、高齢期の骨格筋量の減少と筋力又は身体機能(歩行速度)の低下を指す筋疾患で
ある 51,52)。1980 年代頃に、老化による筋量の減少の病的意義が注目され始め、その後、筋機能の低下
が生命予後や機能予後と密接に関連することが明らかになった 53,54)。2010 年に European Working
Group on Sarcopenia in Older People(EWGSOP)が、筋量減少と握力又は歩行速度を指標にした診断基
準を提唱し 55)、その後、EWGSOP の基準は改定されている 56)。アジア人を対象にした診断基準が、
Asian Working Group for Sarcopenia(AWGS)から提唱されている 57,58)。握力が診断基準に含まれるの
は、それが筋力全体の指標であるだけでなく、高齢者の機能的自立や Quality of life(QOL)と密接な
関係があるからである 59)。
肥満は、酸化ストレス、炎症、インスリン抵抗性などの代謝異常により骨格筋に悪影響を及ぼす。
そのため、肥満(又は体脂肪の増加)では、筋量減少を合併したサルコペニア肥満が問題になる 52,60,61)。
サルコペニア肥満は、肥満単独と比較して、死亡、フレイル、手段的 ADL 低下を来しやすい 30,62)。
肥満とサルコペニアは異質な概念であるため、サルコペニア肥満の診断基準は確立していないが、そ
の概念が整理されつつある 60)。高齢者で、肥満や過体重を認める場合には、サルコペニア肥満の可能
性を考慮する 60)。
表2 サルコペニアの定義
1.
筋肉量減少
2.
筋力低下(握力など)
3.
身体能力の低下(歩行速度など)
上記の項目 1 に加え項目 2 又は項目 3 を併せ持つ場合に
サルコペニアと診断される。文献 55)を改変。
身体的フレイルの評価項目には、身体機能や筋力の低下が組み込まれており、サルコペニアはフレ
イルを来す代表的な疾患として位置付けることができる 63,64)。また、フレイルとサルコペニアは双方
向に影響しあい、共に機能障害や要介護状態と関連する 65)。
低栄養によりサルコペニアを発症すると、それが筋力、身体機能の低下を誘導し、エネルギー消費
量の減少や食欲低下につながり、更に栄養不良が進行する負の連関(いわゆるフレイル・サイクル)
が形成される(図1)66)。サルコペニアの誘因となる栄養の問題は、必ずしも低栄養のみではないが、
適切な栄養の摂取により、フレイルやサルコペニアの発症や進展を予防することは極めて重要になる。
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