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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (275 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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⑤ リン(P)
1 基本的事項
1-1 定義と分類
リン(phosphorus)は原子番号 15、元素記号 P の窒素族元素の 1 つである。リンは、有機リンと無
機リンに大別できる。成人の生体内には最大約 850 g のリンが存在し、その約 85%が骨組織に、約 14%
が軟組織や細胞膜に、約 1%が細胞外液に存在する。

1-2 機能
リンは、カルシウムと共にハイドロキシアパタイトとして骨格を形成するだけでなく、ATP の成分、
その他の核酸や細胞膜リン脂質の成分、細胞内リン酸化を必要とするエネルギー代謝などに必須の成
分である。
血清中のリン濃度の正常範囲は 2.5~4.5 mg/dL(0.8~1.45 mmol/L)
と、カルシウムに比べて広く 146)、
食事からのリン摂取量の増減がそのまま血清リン濃度と尿中リン排泄量に影響する。血清リン濃度と
尿中リン排泄量は、主に副甲状腺ホルモン(PTH)、線維芽細胞増殖因子 23(FGF23)、活性型ビタ
ミンDによって調節されている 147)。

1-3 消化、吸収、代謝
腸管におけるリンの吸収は、受動輸送によるものとビタミンD依存性のナトリウム依存性リン酸ト
ランスポーターを介した二次性能動輸送によるものがあるが、通常の食事からの摂取量では大部分は
受動輸送による輸送と考えて良い 148)。リンは、消化管で吸収される一方で、消化管液としても分泌
されるため、見かけの吸収率は成人で 60~70%である 148)。一方、血清リン濃度を規定する最も重要
な機構は、腎臓での再吸収であり、PTH と FGF23 は、近位尿細管でのリン再吸収を抑制し、尿中リ
ン排泄量を増加させることで、血清リン濃度を調節している 147)。尿中へのリン排泄量は、消化管で
のリン吸収量にほぼ等しい。

2 指標設定の基本的な考え方
リンは多くの食品に含まれており、通常の食事では不足や欠乏することはない。一方、食品添加物
として多くのリンが用いられており、国民健康・栄養調査などの報告値よりも多くのリンを摂取して
いることも考えられる。1988 年のアメリカの報告では、食事中のリンは計算値と実測値で平均して約
250 mg/日乖離しており、加工食品やインスタント食品が多い食事、外食などでは、350mg/日以上の乖
離がみられたとされている 149)。我が国の報告では、2023 年の食品安全委員会の「食品添加物のばく
露評価に関する情報収集調査」によると、食品添加物由来のリン摂取量は 53.4 mg/日と報告されてい
る 150)。一方、厚生労働省の「令和 3 年度マーケットバスケット方式による酸化防止剤、防かび剤等
の摂取量調査」では、248 mg/日という推定値も報告されている 151)。しかし、これは食品由来のリン
も含まれた値であり、実際の食品添加物由来のリン摂取量は 50~60 mg/日という報告 152)もあるなど、
結果にはばらつきがある。
慢性腎臓病(CKD)ではリン摂取の制限も考慮されている。したがって、不足や欠乏の予防よりも、
過剰摂取の回避が重要といえる。

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