「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (129 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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必須脂肪酸でないため、必要量は存在しない。一方、冠動脈疾患の明らかな危険因子の 1 つであり、
目標量の算定を考慮すべき栄養素である。
「LDL-コレステロール/HDL-コレステロール」の比への影響を考えるとその影響は、摂取量が同
じ場合、トランス脂肪酸の方が飽和脂肪酸よりも 2 倍程度大きい 52)。これに現在の摂取量(前述のよ
うに日本人成人の平均摂取量は、トランス脂肪酸で 0.3%エネルギー程度、飽和脂肪酸の 7%エネルギ
ー程度である)を考慮すると、トランス脂肪酸の影響は、飽和脂肪酸の影響の 12 分の 1 程度(=(0.3
×2)/(7×1))となる。
トランス脂肪酸が冠動脈疾患の明らかな危険因子の 1 つであるが、欧米に比較して日本人の摂取量
は少ないと考えられ、その健康影響に関する報告はいまだ十分ではないことを勘案して、目標量は策
定しないこととした。ただし、これはトランス脂肪酸の摂取量を現状のままに留めて良いという意味
ではない。日本人の大多数は、トランス脂肪酸に関する WHO の目標を下回っており、通常の食生活
ではトランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられているものの、様々な努力によっ
て(飽和脂肪酸に置き換えるのではなく)平均摂取量を更に少なくし、また、多量摂取者の割合を更
に少なくするための具体的な対策が望まれる。
ところで、WHO をはじめ、アメリカなどいくつかの国では、トランス脂肪酸の摂取量を総エネル
ギー摂取量の 1%未満に留めることを推奨している 20,59)。したがって、あくまでも参考値ではあるも
のの、日本人においてもトランス脂肪酸の摂取量は 1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%
エネルギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいと考えられる。
8 食事性コレステロール
8-1 基本的事項
コレステロールは、ステロイド骨格と炭化水素側鎖を持つ両親媒性の分子である。体内で合成でき、
経口摂取されるコレステロール(食事性コレステロール)は体内で作られるコレステロールのおよ
そ 1/3~1/7 である 60)。また、コレステロールを多く摂取すると肝臓でのコレステロール合成は減少
し、摂取量が少なくなるとコレステロール合成が増加するフィードバック機構が働く 61)。このため、
コレステロール摂取量と血中コレステロール値との間には関連はあるものの、体内で合成されるコレ
ステロールは胆汁や細胞構成成分として複合的に利用され、排泄される量で調整も行われている 61,62)。
これらのことから、コレステロールは必須栄養素ではない。
8-2 摂取状況
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査における日本人成人(18 歳以上)の摂取量の中央値は、370
mg/日(男性)、321 mg/日(女性)である。
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