「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (180 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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高齢者では、胆汁酸塩類や膵液の分泌量低下、食事性の脂質摂取量の減少などにより、腸管からの
ビタミンK吸収量が低下すると考えられる。また、慢性疾患や抗生物質の投与を受けている場合には、
腸管でのメナキノン産生量が減少することやビタミンKエポキシド還元酵素活性の阻害によるビタ
ミンK作用の低下が見られる 128)。このような理由から、高齢者に対してはビタミンKの目安量を更
に引き上げる必要があると考えられる。ただ、高齢者ではより多量のビタミンKを要するとの報告も
あり 126)、この点に関する報告がいまだ十分に集積されていないため、成人と同じ値とした。
・小児(目安量)
成人で得られた目安量を基に成長因子を考慮し、体表面積を推定する方法により外挿した。ビタミ
ンK栄養状態が成長期の骨の健康に関係することも示唆されているが、研究報告は十分ではなく、成
人よりもビタミンK摂取量を増やす根拠はないとしている 129)。したがって、外挿した値が成人の目
安量よりも高値の場合、成人と同値とした。
・乳児(目安量)
ビタミンKは胎盤を通過しにくく 19)、母乳中のビタミンK含量は低い 19,130)。加えて乳児では腸内
細菌によるビタミンK産生及び供給量が低いと考えられる 130)。そのため、新生児はビタミンKの欠
乏に陥りやすい。出生後数日で起こる新生児メレナ(消化管出血)や約 1 か月後に起こる特発性乳児
ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)は、ビタミンKの不足によって起こることが知られており、臨床領
域では出生後直ちにビタミンKの経口投与が行われる 131)。
日本人の母乳中ビタミンK濃度の平均値は、5.17 µg/L と報告されている 130)。また、精度の高い測
定法でも、
フィロキノンが 3.771 ng/mL、
メナキノン- 7 が 1.795 ng/mL と、その合計量は前方に近い 19)。
以上より、ここでは、臨床領域におけるビタミンK経口投与が行われていることを前提として、0
~5 か月児では、母乳中のビタミンK濃度(5.17 µg/L)に基準哺乳量(0.78 L/日)19,102)を乗じて、目
安量を 4 µg/日とした。6~11 か月児では、母乳以外の食事からの摂取量も考慮して目安量を 7 µg/日
とした。
・妊婦(目安量)
周産期におけるビタミンKの必要量を検討した報告は乏しい。妊娠によって母体のビタミンK必要
量が増加したり、母体の血中ビタミンK濃度が変化したりすることは認められていない 132)。また、
妊婦でビタミンKの欠乏症状が現れることもない。ビタミンKは胎盤を通過しにくく、このため妊婦
のビタミンK摂取が胎児あるいは出生直後の新生児におけるビタミンKの栄養状態に大きく影響す
ることはない。したがって、妊婦と非妊婦でビタミンKの必要量に本質的に差異はなく、同年齢の目
安量を満たす限り、妊婦におけるビタミンKの不足は想定できない。以上のことから、妊婦の目安量
は非妊娠時の目安量と同様に 150 µg/日とした。
・授乳婦(目安量)
授乳中には、乳児への影響を考慮して、授乳婦に対するビタミンKの目安量を算出した方が良いと
考えられる。しかし、授乳婦においてビタミンKが特に不足するという報告が見当たらないため、非
授乳時の目安量と同様に 150 µg/日とした。
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