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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (477 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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2-3 たんぱく質
たんぱく質は骨の重要な構成要素である。成人の骨は骨代謝回転(remodeling)によって継続的に
再構築されているが、骨吸収によって分解されたたんぱく質の全てが骨形成に再利用されるわけでは
なく、たんぱく質の摂取は骨形成に必須である。
コホート研究のシステマティック・レビューによると、追跡開始時のたんぱく質摂取量とその後の
骨密度には関連を認める研究結果が多い 49)。ただし、個人間差が比較的小さいというたんぱく質の摂
取量の特徴を踏まえると、多くのコホート研究で用いられている食物摂取頻度調査法等の食事調査法
では、骨密度の向上に効果的なたんぱく質の摂取量の閾値を評価することは難しい。
また、食事として 13.2~45 g/日のたんぱく質を付加したり、食事内容の変更でたんぱく質を 90 g/日
以上を確保する等の介入効果を検討した無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、介入群では腰椎
骨密度が対照群に比較して良好であったもののその効果はわずかであり、大腿骨近位部や大腿骨頸部
の骨密度には有意な効果は認められていない 50)。なお、推奨量以上の量のたんぱく質の付加の骨密度
の有意な改善を認めていない研究 49,51)もあり、たんぱく質を付加することによる骨密度の増加は、少
なくとも臨床的に有用といえるほど大きなものではないと考えられる。
さらに、たんぱく質摂取量と骨折リスクの関係を検討したコホート研究のメタ・アナリシスでは、
たんぱく質の摂取量と大腿骨近位部骨折リスクとの間に負の関連が認められたが、椎体骨折や全骨折
では有意な関連は示されておらず 49)、他のメタ・アナリシスでも結果は一致していない 52,53)。
以上より、たんぱく質の摂取量の不足の回避は重要であるが、現時点では骨粗鬆症の予防の観点か
ら、たんぱく質摂取量の影響の程度について一定の結論を出すことは難しい。

2-4 エネルギー(体格)
低体重は骨粗鬆症及び骨粗鬆症による骨折の重要なリスク要因とされている。エネルギー摂取量は
体重に影響し、骨粗鬆症の発生、進展、そして骨折に関与すると考えられる。
体重や BMI は骨密度と正の関係を持つことが多くの研究で報告されている 54–58)。韓国の国民健康
栄養調査の 50 歳以上の参加者を対象とした横断研究 59)では、BMI が 21~23 kg/m2 の群に比べて、BMI
が 18.5 kg/m2 未満の群では骨粗鬆症の診断が男女ともに多く見られた一方で、BMI が 25 kg/m2 以上で
は、女性では骨粗鬆症の頻度が少なく、男性では有意な差は見られなかった。年齢、性別、閉経、骨
密度の測定部位などによって異なるとの報告もあるが 60,61)多くの横断研究で体重、あるいは BMI と
骨密度には有意な正の相関が認められている 54–58)。
また、25 のコホート研究の女性対象者約 40 万人のプール解析では、BMI が 25 kg/m2 の群に比較し
て BMI が 15 kg/m2 の群では骨粗鬆症性骨折及び大腿骨近位部骨折のリスクが有意に高く、BMI が 35
kg/m2 の群では骨折リスクは低減したことを示している 62)。
なお、この研究の対象者の BMI は平均 26.6
kg/m2 と大きく、この結果を日本人にそのまま当てはめるには注意が必要であるが、日本人を対象とし

たコホート研究でも BMI と骨折の関連を示す報告は複数ある 63,64)。体格が日本人と比較的近しい韓
国人 285,643 人を対象としたコホート研究でも、BMI が 25~27.4 kg/m2 の群と比較して 18.5 kg/m2 未満
の群では男女ともに臨床的椎体骨折、前腕骨折、上腕骨骨折のハザード比は有意に高かったのに対し、
BMI が 30 kg/m2 以上では女性の前腕骨折での骨折リスクの低下以外は有意な差はみられていない 65)。
以上から、骨粗鬆症の予防、骨折リスクの低減のために低体重は回避するべきと考えられる。一方
で、BMI が 25 kg/m2 以上における骨折リスクについては、部位や性別によって異なると考えられるも
のの、おおむね低いと考えられる。しかしながら、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脂質異常症などに関
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