「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (169 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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けることを推奨し、成人(18~64 歳)の目安量(9.0 µg/日)と同じとした。
・小児(目安量)
ビタミンD欠乏性くる病における血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度の基準は、20 ng/mL 以下とさ
れており 60)、小児でも血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度 20 ng/mL 以下で骨折リスクが増大する 61)。
したがって、成人と同様に小児においても、血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度の参照値として 20
ng/mL を採用した。日本人の 12~18 歳の男女 1,380 人のビタミンD摂取量を評価し、血清 25-ヒドロ
キシビタミンD濃度を測定した報告 62)があり、ビタミンD摂取量の平均値は対象者の性・年齢を問わ
ず約 10 µg/日であったが、血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度が 20 ng/mL 未満であった者は、男子で
30.1%、女子で 47.1%存在した。また、血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度 20 ng/mL を超えるには、男
子で 12 µg/日以上、女子で 14 µg/日以上のビタミンD摂取が必要となることも示されている。しかし、
日本人において、ビタミンD摂取量と血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度の比較検討を行った報告が
乏しいことから、小児を対象とした研究結果に基づいて目安量を算定することは困難と考えられた。
そこで、成人で得られた目安量を用いて外挿をして求めた。なお、算定値が成人より大きい場合には、
成人と同値とした。また、性別を考慮した値の算定は困難と考え、男女において数値が多い方の値を
採用し、男女別の値は示さなかった。
・乳児(目安量)
乳児において、ビタミンD欠乏によるくる病は稀ではないことが、海外だけでなく我が国でも報告
され 63–65)、日照機会の乏しいこと、母乳栄養などがその危険因子として挙げられている。京都で行わ
れた疫学調査においても、新生児の 22%に頭蓋癆(頭蓋骨の石灰化不良、原因としてビタミンD欠乏
が疑われる)が見られ、頭蓋癆と診断された新生児の 37%において、1 か月健診時点でも血清 25-ヒ
ドロキシビタミンD濃度の低値(10 ng/mL 未満)が認められている 66)。
日照を受ける機会が少なく、専ら母乳で哺育された乳児では、くる病のリスクが高いとの報告があ
る 67)。このような状態にある乳児に 6 か月間にわたってビタミンDを与えたところ、くる病の兆候を
示した乳児はみられなかった。このときの総ビタミンD摂取量(母乳由来と補給の合計)が 4.88 µg/
日が最低量であった。アメリカ小児科学会では 2003 年のガイドラインにおいて、くる病防止に必要
な量として 5 µg/日を定めた 68)。さらに、2008 年のガイドラインでは 10 µg/日が必要と改訂してい
る 69)。しかしながら、このガイドラインの達成率は実際には低いという報告もある 70)。以上のような
理由により、0~5 か月児における目安量を 5 µg/日とした。
また、香港で行われた観察研究では、生後 6 か月、12 か月時のビタミンD摂取量がそれぞれ 8.6、
3.9 µg/日であった乳児(150 人)の 18 か月時における平均血清 25-ヒドロキシビタミンD濃度の平均
値は全て 10 ng/mL 以上であったと報告されている 71)。十分な知見がそろっているとは言い難いが、
この結果及び他の報告も参考とし、適度な日照を受ける環境にある 6~11 か月児の目安量を 5 µg/日
とした。
・妊婦(目安量)
妊婦において、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が低いと、妊娠高血圧症候群(主に子癇前症)
の発症リスクが高いことが報告されている 39)。しかしながら、妊婦の必要量が非妊娠時の同年齢の女
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