「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (326 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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生する 135,144)。
連日 1.7 mg/日のヨウ素(ヨウ化物)を摂取した人に甲状腺機能低下が生じることから、アメリカ・
カナダの食事摂取基準は成人のヨウ素の耐容上限量を 1.1 mg/日としている 144)。実際、中国やアフリ
カでは、飲料水からの 1.5 mg/日を超えるヨウ素摂取が甲状腺腫のリスクを高めている 160,161)。しかし、
日本人のヨウ素摂取源である昆布に含まれるヨウ素の吸収率がヨウ化物よりも低いとする報告があ
ること 137,138)、更に動物実験の段階ではあるが、大豆製品がヨウ素の利用を妨げていることが確認さ
れていることから 162,163)、この値は日本人のヨウ素の耐容上限量に適用できないと判断した。
前述のように、日本人のヨウ素摂取量は平均で 1~3 mg/日と推定できるが、甲状腺機能低下や甲状
腺腫の発症は極めて稀である。これより、我が国の一般成人に限定すれば、3 mg/日をヨウ素摂取の最
大許容量、すなわち健康障害非発現量とみなせると判断した。そして、3.0 mg/日が一般集団について
の推定値であることから、不確実性因子を 1 として耐容上限量を 3.0 mg/日と試算した。
一方、我が国の報告では、主に昆布だし汁からのヨウ素 28 mg/日の約1年間の摂取事例 164)、昆布
チップ 1 袋を約 1 か月食べ続けた事例 165)等、明らかに特殊な昆布摂取が行われた場合に、甲状腺機
能低下や甲状腺腫が認められている。我が国の健康な人を対象にした実験では、昆布から 35~70 mg/
日のヨウ素(乾燥昆布 15~30g)を 10 人が 7~10 日間摂取した場合に血清 TSH の可逆的な上昇 166)、27
mg/日のヨウ素製剤を 28 日間摂取した場合に甲状腺機能低下と甲状腺容積の可逆的な増加が生じて
いる 167)。これらを最低健康障害発現量と考え、不確実性因子 10 を用いると、耐容上限量はそれぞ
れ 2.8、3.5、2.7 mg/日と試算できる。
ところで、北海道住民を対象にした疫学調査では、尿中濃度から 10 mg/日を上回るヨウ素摂取があ
ると推定できる集団において、甲状腺機能低下の発生率が上昇している 168,169)。ただし、この調査は、
尿中ヨウ素濃度の測定が 1 回であるので、この結果から耐容上限量の算定はできない。
以上より、健康障害非発現量、若しくは最低健康障害発現量に基づいて試算した耐容上限量がいず
れも 3.0 mg/日付近になることから、耐容上限量は一律 3.0 mg(3,000 µg)/日とした。
・小児(耐容上限量)
世界各地の 6~12 歳の小児を対象にした研究では、北海道沿岸部の小児において、甲状腺容積が他
地域に比較して有意に大きいと報告している 170)。この報告では、これらの小児の平均ヨウ素摂取量
を、ヨウ素の吸収率が 100%近いという前提の下で、随時尿のヨウ素濃度から 741 µg/日と推定してい
る。しかし、この北海道の小児のヨウ素給源が昆布と推定されること、昆布中のヨウ素の吸収率がヨ
ウ化物よりも低いとする報告があること 137,138)、及び昆布の投与試験において、尿中ヨウ素濃度が昆
布摂食後 4 時間で最高値を示し、その後に速やかに低下することが観察されていることから 138)、ヨ
ウ素の主要な摂取源が昆布である日本人において随時尿からヨウ素摂取量を推定することには疑問
がある。
先に策定した成人のヨウ素の耐容上限量 3,000 µg/日を 18〜29 歳の体重当たりで示すと、男性が 47.6
µg/kg/日、女性が 58.8 µg/kg/日となる。小児の年齢層別の耐容上限量はこれらの値を参照値として、
性・年齢区分別の参照体重を乗じ、男女の値を平均して設定した。
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