「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (301 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
全機関(EFSA)は、上記の方法に従い、血清フェリチン濃度 30 µg/L の場合の鉄吸収率を、月経のあ
る女性については 18%、それ以外の成人と 12〜17 歳の小児については 16%と見積もり、鉄の必要量
を算定している 3)。鉄の栄養状態が適正である場合の血清フェリチン濃度が 25〜250 µg/L とされてい
ることから 14)、その下限に近い血清フェリチン濃度 30 µg/L の場合の鉄吸収率を必要量の算定に用い
るという EFSA の考え方は、必要量を過大又は過少に見積もることを避けるという観点から妥当と判
断できる。
また、12 歳未満の小児について、EFSA は、主に欧米の 6 歳以下の幼児を対象とした実験結果に基
づき、鉄吸収率を 10%としている 3)。しかし、EFSA は同じ報告書の中で、乳幼児についても、成人
と同様に鉄の状態が非ヘム鉄の吸収効率の重要な決定要因であると述べている 3)。すなわち、12 歳未
満の鉄吸収率が 12 歳以上と異なる積極的な理由はないと判断できる。以上より、必要量の算定に用
いる鉄吸収率は、月経のある女性の場合を 18%、月経のない場合は 6〜11 か月児以上の全ての年齢区
分について男女共通で一律に 16%とした。
・月経に伴う鉄損失
月経に伴う鉄損失は、鉄欠乏性貧血の発生と強く関連する 15)。これまでの食事摂取基準では、20 歳
前後の日本人を対象にした複数の研究をまとめた報告 16)に基づき、月経に伴う血液損失として、18 歳
以上には 37.0 mL/回、10~17 歳には 31.1 mL/回、月経周期として全年齢区分に 31 日を適用してきた。
しかし、これらの数値は過多月経の人を含めたものであり、50 年以上前の報告も含まれていた。
2016 年から 2017 年にかけて 31 万人の日本人女性から得られた延べ 600 万の月経周期を解析した
研究では、平均月経周期は 15~23 歳頃にかけて長くなり、その後 45 歳頃までは短くなった後、再び
長くなることが示されている 17)。この報告から、月経周期として、18 歳未満 29 日、18〜29 歳 31 日、30
〜49 歳 29 日、50 歳以上 30 日と見積もった。また、最近の研究では、過少月経と過多月経の者を除
いた 19〜39 歳 118 人の月経分泌物量は 67.4 ± 27.4 g/回と報告されている 18)。この報告は、対象者の
年齢層が広く、過少及び過多月経の者を除いた解析であり、これまでの報告よりも有用であると判断
できる。月経分泌物中の血液の含有割合を 52.0%16,19)、日本人女性の血液比重を基準値
(1.052〜1.060)20)
の中間値 1.056 とすると、この報告が示す正常月経者の血液損失量は 33.2 ± 13.5 mL/回となる。
以上より、要因加算に用いる月経に伴う血液損失量を全ての年齢層において 33.2 mL/回とした。そ
して、全年齢層について、ヘモグロビン濃度 135 g/L21)、ヘモグロビン中の鉄濃度 3.39 mg/g11)を採用
し、月経による鉄損失を、表3に示すように 10~17 歳で 0.52 mg/日、18~29 歳で 0.49 mg/日、30~49
歳で 0.52 mg/日、50 歳以上で 0.51 mg/日と推定した。
・必要量の個人間変動
これまでの食事摂取基準では、6 か月〜5 歳において個人間の変動係数を 20%と見積もってきたが、6
〜11 歳に関しても個人間変動が大きいと考えられる。そこで月経のない場合の変動係数については、6
か月〜11 歳を 20%、12 歳以上を 10%とした。
EFSA では、月経による血液損失が鉄の必要量に及ぼす影響が大きいことから、月経のある女性に
関しては、集団の 95%が鉄欠乏を予防できる摂取量である集団参照値(population reference intake:PRI)
を算定するに当たり、月経による血液損失量の 95 パーセンタイル値を用いている 3)。この考えに従
い、月経のある女性の推奨量の算定において、月経による鉄損失は月経による血液損失の平均値+標
291