「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (26 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
●妊婦・授乳婦
推定平均必要量及び推奨量の設定が可能な栄養素については、非妊娠時・非授乳時のそれぞれの値
に付加すべき量として食事摂取基準を設定することとした。目安量の設定に留まる栄養素については、
原則として、胎児の発育に問題ないと想定される日本人妊婦や授乳婦の摂取量の中央値を用いること
とし、これらの値が明らかでない場合には、非妊娠時、非授乳時の値を目安量として用いることとし
た。国民健康・栄養調査から求める場合、平成 30・令和元年の 2 か年分の人口動態統計調査を用い、
「母親の年齢階級(15~17 歳、18~29 歳、30~49 歳)別出生数÷年齢階級(同)別 国民健康・栄養
調査解析対象者数(女性)」で重み付けをし、年齢区分を調整した摂取量の中央値を算出し、目安量
として用いることとした。
胎児の成長に伴う蓄積量を考える場合には、妊娠期間の代表値を 280 日として、1 日当たりの量と
して表すこととした。妊娠期間を細分化して考える必要がある場合は、妊娠初期(~13 週 6 日)、妊
娠中期(14 週 0 日~27 週 6 日)、妊娠後期(28 週 0 日~)に三分割した。
授乳期には、泌乳量のデータが必要であるが、日本人女性の泌乳量に関する信頼度の高いデータは
存在しない。そこで、哺乳量(0.78 L/日)5,6)を泌乳量として用いることとした。
耐容上限量については、妊婦、授乳婦における報告が乏しく、算定できない栄養素が多かった。し
かしこれは、多量に摂取しても健康障害が生じないことを保障するものではない。基本的には当該年
齢の非妊婦・非授乳婦における耐容上限量を参考とするのが便宜的であると考えられるが、妊婦にお
ける胎児への影響や、授乳婦における母乳への影響は考慮されていないため、慎重に、すなわち、耐
容上限量を厳しく考えることが望まれる。しかしながら、この問題に関する科学的根拠は乏しいため、
その量的な基準は示さなかった。
目標量については、妊婦・授乳婦ともに、非妊娠・非授乳中女性と同じ基準とした。しかし、妊娠
高血圧症候群や妊娠糖尿病などが存在し、これらを無視することはできないことから、今後、妊婦の
目標量を設定する必要性と目標量を適切に設定できるかについて詳細な研究が必要である。
●乳児
出生後 6 か月未満の乳児では推定平均必要量や推奨量を決定するための実験はできない。そして、
健康な乳児が摂取している母乳の質と量は乳児の栄養状態にとって望ましいものと考えられる。この
ような理由から、乳児における食事摂取基準は、目安量を算定するものとし、具体的には、母乳中の
栄養素濃度と健康な乳児の母乳摂取量の積とした。この期間を通じた哺乳量は平均 0.78 L/日との報告
があるため 5,6)、今回は 0.78 L/日を基準哺乳量とした。
6~11 か月の乳児では、母乳(又は人工乳)だけでなく、通常の食品の摂取も考えなくてはならな
い。しかし、この集団における知見は乏しい。そこで、0~5 か月の乳児及び(又は)1~2 歳の小児の
値から外挿して求めた。
しかし、0~5 か月又は 6~11 か月というそれぞれ 1 つの月齢区分の中でも、区分内での成長は著し
い。したがって、各月齢区分に与えられた値はあくまでもその月齢区分を代表する一点に過ぎないこ
とに留意し、対象とする乳児の成長に合わせて柔軟に活用することが望まれる。
16