「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (65 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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3-2-1 基本的な考え方
健康的な体重を考えるためには、何をもって健康と考えるかをあらかじめ定義する必要がある。
「理
想(ideal)体重」、「望ましい(desirable)体重」、「健康(healthy)体重」、「適正(optimal)体重」、
「標準(standard)体重」、「普通(normal)体重」等、健康的な体重を表す用語は定義も様々である
上に、必ずしも一定でない場合もある 12,13)。このため食事摂取基準では、体重ではなく、総死亡率を
できるだけ低く抑えられると考えられる BMI を基本として、BMI と主な生活習慣病の有病率、医療
費の支出状況、高齢者における身体機能低下、労働者の退職との関連を考慮して、目標とする BMI の
範囲を定めることにした。なお、総死亡率をアウトカムとして乳児や小児に用いるのは適切ではなく、
妊娠時の体重管理に用いるのも適切ではない。
3-2-2 健康的な体重やBMIに関する歴史的経緯
総死亡率を基にした健康的な体重の検討は、アメリカの生命保険会社が保険契約者のデータを基に
発表した理想体重表 14,15)に端を発する。我が国では、上記の表 16)から靴の厚さ、着衣の重量を補正し
た松木の標準体重表 17)、保険契約者の最低死亡率を基にした明治生命標準体重表 18,19)などが提唱され
た。これらはいずれも身長に対し最適な 1 つの体重を呈示していた。
我が国では、標準体重(=22×[身長(m)]2)が頻用されてきたが、これは職域健診の異常所見の合計
数が最も少なくなる BMI に基づくものであり 20,21)、30~59 歳の男女を対象に、健診データ 10 項目
〔胸部 X 線、心電図、上部消化管透視、高血圧、血尿・蛋白尿、AST(GOT)、ALT(GPT)、総コ
レステロール・トリグリセライド、高尿酸血症、血糖(空腹時、糖負荷後)、貧血〕の異常所見の合
計数を BMI で層別に平均し、BMI との関係を二次回帰したものである。本来は 30~59 歳を対象に、
この検討で用いられた結果因子(10 項目の測定項目)に限定して用いられるべきものであった 21)。
3-2-3 BMIと総死亡率等との関連
健康な日本人成人を主な対象とする代表的な 7 つのコホート研究のプール解析(追跡開始時の年齢
幅:40~103 歳)、JPHC study(同:40~59 歳)及び JACC study(同:65~79 歳)における研究開始
時の BMI とその後観察期間中の総死亡率の関連を図3に示す 22–24)。年齢区分別にみると、およそ 65
歳未満では総死亡率はJ字型又はU字型を描き、21.0~26.9 が望ましい BMI の範囲と考えられる。一
方、およそ 65 歳以上では両者の関連はほぼ逆L字型を描き、BMI が 30 以上になって初めて総死亡率
の増加は観察される。このように BMI と総死亡率の関連は年齢によって異なり、追跡開始年齢が高
くなるほど総死亡率を最低にする BMI は男女共に高くなる傾向がある。世界 239 のコホート研究を
用いたプール解析のサブ解析として行われた東アジア地域の 61 のコホートを用いた解析では、35~
49 歳で 18.5~25、50~69 歳で 20~25、70~89 歳で 20~27.5 の BMI で最も低い総死亡率を示した(図
4)25)。
主な生活習慣病に着目した場合、肥満は血圧や血中非 HDL-コレステロール濃度、糖尿病有病率と
強い正の関連を有している 26)。また、BMI と日本人成人が費やす医療費は正の関連を示し、特に BMI
が 25 以上の集団で高値を示している 27,28)。さらに、高齢者(65 歳以上)を対象として、日常生活動
作が自立しているかどうかについて身体機能低下の発現リスクを指標とした 9 つの研究によるメタ・
アナリシスでは、BMI と身体機能低下の発現リスクの間には、BMI が増えるほどなだらかにリスクが
増加していく、正の関連が観察され、この関連に閾値は観察されなかった 29)。また、労働者を対象と
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