「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (421 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
INTERMAP では、植物性たんぱく質摂取量と血圧の負の関連、また、植物性たんぱく質に多いアミ
ノ酸であるグルタミン酸の摂取量と血圧の負の関連が報告されている 81,82)。OmniHeart 研究では、食
事の炭水化物の一部をたんぱく質で置き換えると、軽度であるが有意な血圧低下が認められた 77)。こ
の研究では、特に植物性たんぱく質の増加の程度が大きかった。未治療で 120~159/80~99 mmHg の
者を対象にした PREMIER 研究のサブ解析 83)においても、植物性たんぱく質の摂取量増加が 18 か月
後の高血圧リスクを減らした。同様の血圧レベルの者で、40 g/日の大豆たんぱく又は 40 g/日の乳たん
ぱくの負荷は 40 g/日の炭水化物負荷(対照群)に比べて、収縮期血圧の軽度の低下を示した 84)。大豆
たんぱくの血圧低下効果についてはメタ・アナリシス 85)があり、大豆たんぱくの中央値 30 g/日で有
意な血圧低下を示した。乳製品や低脂肪乳製品は、疫学研究のメタ・アナリシスで高血圧リスクを抑
えることが示された 86)。また、介入試験のメタ・アナリシスでは、約 40 g/日のたんぱく質摂取は同量
の炭水化物摂取と比較して有意な血圧低下を示した 87)。DASH 食事パターン 8,52)において野菜や低脂
肪乳製品が増加されていることは、以上の知見と整合性がある。たんぱく質は、他の食事性因子との
組合せも考えて、バランスよく摂取すべきである。
2-11 炭水化物
食事の炭水化物の一部をたんぱく質や不飽和脂肪酸で置き換えると血圧が下がるという OmniHeart
研究の結果 77)は、見方を変えると炭水化物が血圧を上げる可能性を示す。思春期女子においてグリセ
ミック・インデックス、グリセミック負荷、炭水化物摂取量、糖類摂取量、果糖の摂取量は血圧と正
の関連を示したという報告がある 88)。また、INTERMAP では、甘味飲料に多い果糖の摂取量と血圧
の正の関連を報告している 89)。さらに、コホート研究のメタ・アナリシスは、砂糖及び人工甘味飲料
の摂取量と高血圧発症リスクの関連を示している 90)。
2-12 栄養素の複合的な摂取
単独では血圧低下効果が弱い栄養素でも、組み合わせて摂取することによって大きな血圧低下効果
を示すと考えられる。野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンである DASH 食パターン 8,52)
は、飽和脂肪酸と食事性コレステロールが少なく、カリウム、カルシウム、マグネシウム、食物繊維
が多いが、大きな血圧低下効果のエビデンスがあり、多くの高血圧治療ガイドラインで取り上げられ
ている。DASH 食パターンは、更に減塩と組み合わせることにより相乗的な作用を有している 8)。ま
た、介入試験のメタ・アナリシスは、1 日のナトリウム摂取量 2,400 mg/日以上(食塩相当量 6 g)及
び 50 歳未満において、DASH 食による血圧低下効果がより高いことを示した 91)。ただし、この食事
パターンは米国の食事を想定して作られており、我が国における同様の食事パターンの確立は不十分
である。類似の食事パターンとして地中海食があり 92)、介入試験のメタ・アナリシスで血圧低下効果
が示されている 93)。
411