よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (140 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

わち、糖質の最低必要量はおよそ 100 g/日と推定される。しかし、肝臓は、必要に応じて筋肉から放
出された乳酸やアミノ酸、脂肪組織から放出されたグリセロールを利用して糖新生を行い、血中にぶ
どう糖を供給する。したがって、これは真に必要な最低量を意味するものではない。
食物繊維は、腸内細菌による発酵分解によってエネルギーを産生する。しかし、その値は一定でな
く、有効エネルギーは 0~2 kcal/g と考えられている 8)。さらに、炭水化物に占める食物繊維の割合(重
量割合)は僅かであるために、食物繊維に由来するエネルギーが炭水化物全体に由来するエネルギー
に占める割合はごく僅かである。なお、日本食品標準成分表(八訂)では、食物繊維は 2 kcal/g のエ
ネルギーを産生する栄養素としてエネルギー計算に含められている 1)。

2 指標設定の基本的な考え方
2-1 炭水化物
炭水化物、特に糖質は、エネルギー源として重要な役割を担っているが、前述のようにその必要量
は明らかにできない。また、通常、乳児以外の者はこれよりも相当に多い炭水化物を摂取している。
そのため、推定平均必要量を算定する意味も価値も乏しい。さらに、炭水化物が直接に特定の健康障
害の原因となるとの報告は、理論的にも疫学的にも乏しい。そのため、炭水化物については推定平均
必要量(及び推奨量)も耐容上限量も設定しない。同様の理由により、目安量も設定しなかった。一
方、炭水化物はエネルギー源として重要であるため、この観点から指標を算定する必要があり、たん
ぱく質及び脂質の残余として目標量(範囲)を算定した。なお、アルコールは、日本人の食事摂取基
準 2020 年版までは炭水化物の項に記述を含めていたが、アルコール(エタノール)は栄養学的にも
化学的にも炭水化物とは異なる物質であり、必須の栄養素でもない。このため、食事摂取基準 2025 年
版では栄養素に関する章では取り扱わないこととした。ただしアルコールはエネルギー源となるため、
エネルギー摂取を考慮する際には、たんぱく質及び脂質の残余には炭水化物とアルコールの両方に由
来するエネルギーが含まれることになる。

2-2 糖類
単糖及び二糖類、すなわち糖類はその過剰摂取がエネルギー過剰摂取やう歯の原因となることは広
く知られている 9,10)。糖類摂取量と肥満の関連を検討した 30 の無作為化比較試験と 38 のコホート研
究をまとめたメタ・アナリシスでは、free sugar(遊離糖類、後述)及び加糖飲料摂取量が多いことと
体重増加の関連を報告しており、それはエネルギー摂取量の違いを介したものであったとしている 11)。
13 万人以上の米国成人を対象としたコホート研究では、added sugar(添加糖類、後述)の摂取量が 100
g/日増えると、4 年間で 0.9 ㎏体重が増えると報告している 12)。糖類摂取量の代理指標として加糖飲
料の体重への影響を検討した報告も多く、コホート研究と無作為化比較試験の報告を計 85 本まとめ
たメタ・アナリシスでは、小児でも成人でも加糖飲料摂取量と体重には正の直線関係があることが示
されている 13)。糖類摂取量と糖尿病の関連も多く検討されている。added sugar の主要な摂取源として
の加糖飲料摂取量と慢性疾患の関連をまとめたレビューでは、加糖飲料摂取量と 2 型糖尿病発症の間
には正の関連があるとしている 14)。また、糖類摂取量と 2 型糖尿病が関連するメカニズムについて
は、エネルギー摂取量を介さない、別の代謝経路も関連すると考えられている 14,15)。う歯については、
55 の研究をまとめたシステマティック・レビュー及び 23 の研究をまとめたシステマティック・レビ
ューにおいて、糖類摂取量が多いこととの関連が指摘されている 16,17)。肥満、2 型糖尿病、う歯のい
ずれについても、それを超えると発症が増える、あるいは減るといった糖類摂取量の明確な閾値は報
130