「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (309 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
亜鉛(zinc)は原子番号 30、元素記号 Zn の亜鉛族元素の 1 つである。
1-2 機能 57)
亜鉛は、成人の体内に約 2,000 mg 存在する。亜鉛の生理機能は、たんぱく質との結合によって発揮
され、触媒作用と構造の維持作用に大別される。亜鉛欠乏の症状は、皮膚炎、味覚障害、慢性下痢、
免疫機能障害、成長遅延、性腺発育障害等である。亜鉛の栄養状態を反映する生体指標は確立してい
ない。血清亜鉛濃度は亜鉛摂取量指標であり、生理的な亜鉛の充足度を表すものではない。
我が国の食事性亜鉛欠乏症は、亜鉛非添加の高カロリー輸液や経腸栄養剤での栄養管理時 58,59)及び
低亜鉛濃度の母乳を摂取していた乳児 60)に報告されている。
1-3 消化、吸収、代謝
亜鉛の恒常性は、亜鉛トランスポーターによる亜鉛の細胞内外への輸送とメタロチオネインによる
貯蔵によって維持される。小腸では、小腸上皮細胞刷子縁膜に存在する亜鉛トランスポーターである
Zrt-, Irt-like protein (ZIP) 4 と側底膜に存在する Zn transporter (ZNT) 1 により、食物由来の 2 価亜鉛イオ
ンが吸収される 61)。腸管吸収率は亜鉛摂取量に伴って変動する。亜鉛の尿中排泄量は少なく、体内亜
鉛の損失は、小腸上皮細胞の剥離、膵液や胆汁の分泌などに伴う糞便への排泄、発汗と皮膚の剥離、
精液又は月経分泌物への逸脱が主なものになる 57)。
2 指標設定の基本的な考え方
日本人を対象とした報告がないので、目安量を設定した 0〜5 か月児を除き、推定平均必要量をア
メリカ・カナダの食事摂取基準 62)を参照し、要因加算法により算定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
要因加算法により必要量を算定する手順は、①腸管以外への体外(尿、体表、精液又は月経分泌物)
排泄量の算出、②腸管内因性排泄量(組織から腸管へ排泄されて糞便中へ移行した量)と真の吸収量
との回帰式の確立、③総排泄量(腸管以外への体外排泄量に腸管内因性排泄量を加算)を補う真の吸
収量の算出、④総排泄量を補う真の吸収量の達成に必要な摂取量の算出、である。
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