「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (69 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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エネルギー出納が保たれ体重が維持された状態にある多人数の集団で、二重標識水法によるエネル
ギー消費量と体重の関係を求めた検討によれば、両者の間に次の式が成り立っていた 40)。
ln(W)=0.712×ln(E)+0.005×H+0.004×A+0.074×S-3.431
ここで、ln:自然対数、W:体重、E:エネルギー消費量(kJ/日)=エネルギー摂取量(kJ/日)、H:身長(cm)、
A:年齢(歳)、S:性(男性=0、女性=1)。
ここで、両辺の指数を取り、同じ身長、同じ年齢、同じ性別の集団を考えれば、身長、年齢、性別
の項は両辺から消去されることによってこの影響はなくなる。個人が異なるエネルギー摂取量を変化
させた場合にも、理論的にはこの式が適用できると考えられる。この式から次の式が得られる。
⊿W=0.712×⊿E
ここで、⊿W:体重(kg)の変化を初期値からの変化の割合で表現したもの(%)、
⊿E:エネルギー消費量(kJ/日)の変化を初期値からの変化の割合で表現したもの(%)。
例えば、エネルギー消費量(=エネルギー摂取量)を 10%減少させた場合に期待される体重の減少
はおよそ 7%となる。
【計算例】体重が 76.6 kg、エネルギー消費量=エネルギー摂取量=2,662 kcal/日の個人がいたとする
(これは上記の論文の対象者の平均体重及び平均エネルギー消費量である 40))。この個人が 100 kcal/
日だけエネルギー摂取量を減らしたとする。
エネルギー摂取量の変化(減少)率=100/2,662≒3.76%
期待される体重変化(減少)率=3.76×0.7≒2.63%
期待される体重変化(減少)量=76.6×2.63%≒2.01 kg
エネルギー消費量には成人男性でおよそ 200 kcal/日の個人差が存在すると報告されている 3)。また、
個人のエネルギー消費量を正確に測定することは極めて難しい。そこで、エネルギー消費量が仮
に 2,462~2,862 kcal/日の範囲にあると推定し、期待される体重変化(減少)量を計算すると、1.87~2.18
kg となる。逆に、期待される体重変化(減少)量を 2 kg にするためには、エネルギー摂取量の変化
(減少)が 92~107 kcal/日であることになる。
なお、脂肪細胞 1 g が 7 kcal を有すると仮定すれば、100 kcal/日のエネルギー摂取量の減少は 14.3
g/日の体重減少、つまり、5.21 kg/年の体重減少が期待できるが、上記のようにそうはならない。これ
は、一つには、体重の減少に伴ってエネルギー消費量も減少するためであると考えられる。体重の変
化(減少)は徐々に起こるため、それに呼応してエネルギー消費量も徐々に減少する。そのため、時
間経過に対する体重の減少率は徐々に緩徐になり、やがて、体重は減少しなくなる。この様子は、理
論的には図5のようになると考えられる。
さらに、体重の減少に伴ってエネルギー摂取量が増加する(食事制限が緩む)可能性も指摘されて
いる 41,42)。したがって、現実的には以下の点に留意が必要である。まず、大きな減量を目指して食事
制限を開始しても、減量に伴ってエネルギー摂取量と消費量の両方が変化するため、少ない体重減少
で平衡状態となることである。厳しい食事制限が減量とともに緩んで約 100 kcal/日の食事制限とな
り、2 kg 程度の減量に落ち着くものと考えられる。また、現実的にはその他の種々の行動学的な要因
の影響を受けて計画どおりには減量できないことも多い。そのため、一定期間ごとに体重測定を繰り
返し、その都度、減少させるべきエネルギー量を設定し直すことが勧められる。その期間は、個別に
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