「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (15 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限として「耐容上限量」を定義
する。これを超えて摂取すると、過剰摂取によって生じる潜在的な健康障害のリスクが高まると考え
る。
理論的には、「耐容上限量」は、「健康障害が発現しないことが知られている習慣的な摂取量」の
最大値(健康障害非発現量、no observed adverse effect level:NOAEL)と「健康障害が発現したことが
知られている習慣的な摂取量」の最小値(最低健康障害発現量、lowest observed adverse effect level:
LOAEL)との間に存在する。しかし、これらの報告は少なく、特殊な集団を対象としたものに限られ
ること、さらには、動物実験や in vitro など人工的に構成された条件下で行われた実験で得られた結
果に基づかねばならない場合もあることから、得られた数値の不確実性と安全の確保に配慮して、
NOAEL 又は LOAEL を「不確実性因子」(uncertain factor:UF)で除した値を耐容上限量とした。具
体的には、次のようにして耐容上限量を算定した。
・ヒトを対象として通常の食品を摂取した報告に基づく場合:
UL=NOAEL÷UF(UF には 1 から 5 の範囲で適当な値を用いた)
・ヒトを対象としてサプリメントを摂取した報告に基づく場合又は動物実験や in vitro の実験に基づ
く場合:
UL=LOAEL÷UF(UF には 10 を用いた)
●目標量(tentative dietary goal for preventing life-style related diseases:DG)
生活習慣病の発症予防を目的として、特定の集団において、その疾患のリスクや、その代理指標と
なる生体指標の値が低くなると考えられる栄養状態が達成できる量として算定し、現在の日本人が当
面の目標とすべき摂取量として「目標量」を設定する。これは、疫学研究によって得られた知見を中
心とし、実験栄養学的な研究による知見を加味して策定されるものである。しかし、栄養素摂取量と
生活習慣病のリスクとの関連は連続的であり、かつ、閾値が存在しない場合が多い(図3)。このよ
うな場合には、好ましい摂取量として、ある値又は範囲を提唱することは困難である。そこで、諸外
国の食事摂取基準や疾病予防ガイドライン、現在の日本人の摂取量・食品構成・嗜好などを考慮し、
実行可能性を重視して設定することとした。また、生活習慣病の重症化予防及びフレイル予防を目的
とした量を設定できる場合は、発症予防を目的とした量(目標量)とは区別して示すこととした。
各栄養素の特徴を考慮して、基本的には次の 3 種類の算定方法を用いた。なお、次の算定方法に該
当しない場合でも、栄養政策上、目標量の設定の重要性を認める場合は基準を策定することとした。
・望ましいと考えられる摂取量よりも現在の日本人の摂取量が少ない場合:範囲の下の値だけを算定
する。食物繊維とカリウムが相当する。これらの値は、実現可能性を考慮し、望ましいと考えられ
る摂取量と現在の摂取量(中央値)との中間値を用いた。小児については、目安量で用いたものと
同じ外挿方法(参照体重を用いる方法)を用いた。ただし、この方法で算出された摂取量が現在の
摂取量(中央値)よりも多い場合は、現在の摂取量(中央値)を目標量とした。
・望ましいと考えられる摂取量よりも現在の日本人の摂取量が多い場合:範囲の上の値だけを算定す
る。飽和脂肪酸、ナトリウム(食塩相当量)が相当する。これらの値は、最近の摂取量の推移と実
現可能性を考慮して算定した。小児のナトリウム(食塩相当量)については、推定エネルギー必要
量を用いて外挿し、実現可能性を考慮して算定した。
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