「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (83 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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ことから基礎代謝量が増加すると考えられるが、実際には明らかな増加は見られない 90)。一方、二重
標識水法を用いて縦断的に検討した 4 つの研究のうち 1 つで身体活動によるエネルギーが有意に減少
しており 78,91–93)、他の 3 つでは絶対量が約 10%減少しているものの有意な差ではなかった。その結
果、授乳期のエネルギー消費量は妊娠前と同様であり、エネルギー消費量の変化という点からは授乳
婦に特有なエネルギーの付加量を設定する必要はない。一方、エネルギー消費量には、母乳のエネル
ギー量そのものは含まれないので、授乳婦はその分のエネルギーを摂取する必要がある。
母乳のエネルギー量は、泌乳量を哺乳量(0.78 L/日)94,95)と同じとみなし、また母乳中のエネルギ
ー含有量を 663 kcal/L96)とすると、
母乳のエネルギー量(kcal/日)=0.78 L/日×663 kcal/L≒517 kcal/日
と計算される。
一方、分娩(出産)後における体重の減少(体組織の分解)によりエネルギーが得られる分、必要
なエネルギー摂取量が減少する。体重減少分のエネルギーを体重 1 kg 当たり 6,500 kcal、体重減少量
を 0.8 kg/月 77,78)とすると、
体重減少分のエネルギー量(kcal/日)=6,500 kcal/kg 体重×0.8 kg/月÷30 日≒173 kcal/日
となる。
したがって、正常な妊娠・分娩を経た授乳婦が、授乳期間中に妊娠前と比べて追加的に摂取すべき
と考えられるエネルギーを授乳婦のエネルギー付加量とすると、
授乳婦のエネルギー付加量(kcal/日)=母乳のエネルギー量(kcal/日)
-体重減少分のエネルギー量(kcal/日)
として求めることができる。その結果、付加量は 517-173=344 kcal/日となり、350 kcal/日とした。
4 活用上の注意点
活用に当たって注意すべき点について、推定エネルギー必要量の信頼性、体格の影響、個人間差、
疾患を有する者、の 4 点からまとめた。
4-1 推定エネルギー必要量の信頼性
どの推定方法を用いても真値を正しく推定できるものではない。今回の食事摂取基準が示す推定エ
ネルギー必要量も同じ限界を有している。そこで、成人(18 歳又は 19 歳以上)について、3 種類の
方法でエネルギー必要量を推定し、比較してみた(図 11)。3 種類とは、(1)今回の食事摂取基準
で用いた推定エネルギー必要量、(2)国立健康・栄養研究所の式 66)に参照身長、参照体重、年齢、
性別(カテゴリー)を代入し、身体活動レベル「ふつう」を乗じた値、(3)アメリカ・カナダの食事
摂取基準で紹介された推定式 3)に参照身長、参照体重、年齢を代入した値(身体活動レベルにはアメ
リカ・カナダの食事摂取基準で紹介された「活動的(ふつう)」を用いた)である。その結果、3 者
の値には 100~200 kcal 程度の差が観察された。どれが正しいかと考えるのではなく、推定式には 100
~200 kcal 程度の誤差があり得るものであると理解すべきである。
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