「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (444 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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糖尿病治療の目標は、高血糖の是正を中心に、全身の代謝状態を良好に維持することにより、合併
症や併存症の発症と重症化を予防し、糖尿病のない人と変わらない寿命と QOL を確保することにあ
る。1 型、2 型を問わず糖尿病の治療においては、食事療法が良好な血糖値の維持と、その後の合併
症の予防の基本となる。特に肥満を伴う 2 型糖尿病では、総エネルギー摂取量の適正化を通して肥満
を解消することで、高血糖のみならず種々の病態の改善が期待される。
また、インスリンの作用は糖代謝のみならず、脂質及びたんぱく質代謝など多岐に及ぶことから、
食事療法を実践する際には、個々の病態に合わせ、高血糖のみならず、あらゆる側面からその妥当性
が検証されなければならない。諸外国においても、生活習慣への介入による肥満の是正を重要視し、
そのために総エネルギー量を調整し、合併症の発症予防の観点から栄養素の摂取量のバランスを図る
ことが推奨されている。しかし、食文化や病態の異なる日本人に対して、海外の観察研究の結果をそ
のまま当てはめることは妥当ではない。さらに、糖尿病の発症・重症化予防のための適正な栄養素摂
取比率に関するエビデンスは乏しく、また、肥満患者の増加や高齢化を背景に、国内でも糖尿病の病
態や併存する臓器障害が多様化していることから、糖尿病患者に理想となる画一的な栄養素摂取比率
を設定することは困難であり、患者ごとの対応が求められる。
本項では、我が国で最も多く、そして、その発症と進展に食事が大きく寄与するとされる、インス
リン抵抗性を病態の中心とする成人期糖尿病と食事の関係を主な内容としている。したがって、1 型
糖尿病や小児、妊娠、高齢期の糖尿病における食事療法に関しては、それぞれに関わる診療ガイドラ
イン等を参照されたい。
2 糖尿病と特に関連の深いエネルギー・栄養素
一般化するために、栄養素等摂取と糖尿病との関連について、特に重要なものを図2に示す。
炭水化物
(ー)
食物繊維
(+)
糖質
(+)
(++)
エネルギー
インスリン抵抗性
(+)
(+)
アルコール
(++)
高
血
糖
(+)
(ー)
飽和脂肪酸
不飽和脂肪酸
脂質
この図はあくまでも概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである。
図2 エネルギー・栄養素摂取と高血糖との関連(特に重要なもの)
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