「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (97 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量(たんぱく質維持必要量)
3-1-1-1 窒素出納法によるたんぱく質維持必要量:特に性差及び年齢差について
たんぱく質の必要量は、窒素出納法を用いて研究が進められてきた。各国の食事摂取基準は、窒素
出納法によって得られたたんぱく質維持必要量を用いてたんぱく質の必要量を算定している。具体的
には、これらの測定結果に基づき、アメリカ・カナダの食事摂取基準では 19 歳以上の全ての年齢区
分において男女ともにたんぱく質維持必要量(平均値)を 0.66 g /kg 体重/日としており 1)、2007 年に
発表された FAO/WHO/UNU(国際連合食糧農業機関・世界保健機関・国際連合大学)によるたんぱく
質必要量に関する報告でも同じ値を全年齢におけるたんぱく質維持必要量としている 2)。また、ほぼ
同様の値を用いて、イギリスは NRI(nutrient reference intake)を 3)、オーストラリア・ニュージーラ
ンドは RDI(recommended dietary intake)を 4)定めている。
15~84 歳を対象として行われたメタ・アナリシス(28 研究、合計対象者数 348 人)は、維持必要
量は 0.66(平均、95%信頼区間は 0.64~0.68)g/kg 体重/日であったと報告している(表1)5)。このサ
ブ解析では、性差、年齢差〔若年・中年(60 歳未満)と高齢者(60 歳以上)の間〕は共に認められな
かった。小児を対象とした 10 の研究(表2)では、維持必要量を 0.67 g/ kg 体重/日(平均)と報告し
ており、前述の成人の値とほぼ同じであった 6–12)。ただし、これは成長に伴う体たんぱく質の増加分
を含んでいない。なお、窒素出納法を用いて高齢者を対象としてたんぱく質の維持必要量を測定した
研究の中には、0.83 g/kg 体重/日、0.91 g/kg 体重/日といった高い値を報告した研究もあるが、この理
由についてはまだ十分には明らかになっていない 13,14)。
なお、窒素出納法の実験は、全て良質なたんぱく質を用いて行われている。したがって、この値を
そのまま食事摂取基準の推定平均必要量とすることはできない。そこで、ここでは窒素出納法を用い
た研究で得られた数値をたんぱく質維持必要量と呼ぶこととする。
3-1-1-2 窒素出納法の限界と課題
窒素出納法には様々な限界があり、その結果を活用する場合には注意を要する。例えば、窒素出納
法では全ての窒素摂取量と全ての窒素排泄量について正確に定量する必要がある。窒素摂取量は、皿
などからこぼしたものや皿に残っているものなど摂取できなかった食物の全てを集めることは難し
いため、摂取量を高く見積もられる可能性が高い。身体からの窒素排泄量は主に尿と糞便であるが、
これ以外にも皮膚、汗、落屑、毛髪、爪など様々な体分泌物による損失もある。そのために、総排泄
量は高く見積もられるよりも低く見積もられる可能性が高い。その結果、たんぱく質摂取量を高く見
積もり、たんぱく質排泄量を低く見積もるので、窒素出納が正に誤って算出されやすい。したがって、
窒素出納法では、たんぱく質又はアミノ酸必要量は低く見積もられる傾向となる。また、以前のたん
ぱく質必要量に関する実験では、エネルギー出納が正の条件で行われる傾向があり、たんぱく質必要
量が低く見積もられた研究があったのではないかと推測される。これらは、系統的に必要量を過小に
見積もる方向に働くために注意を要する。
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