「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (173 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
ビタミンEには、4 種のトコフェロールと 4 種のトコトリエノールの合計 8 種類の同族体が知られ
ており、クロマン環のメチル基の数により、α-、β-、γ-及びδ-体に区別されている。
血液及び組織中に存在するビタミンE同族体の大部分がα-トコフェロールである。このことより、
α-トコフェロールのみを対象にビタミンEの食事摂取基準を策定した(図4)。
HO
CH3
CH3
H3C
O
CH3
CH3
CH3
CH3
CH3
図4 α-トコフェロールの構造式(C29H50O2、分子量=430.7)
1-2 機能
ビタミンEは、生体膜を構成する不飽和脂肪酸あるいは他の成分を酸化障害から防御するために、
細胞膜のリン脂質二重層内に局在する。
1-3 消化、吸収、代謝
摂取されたビタミンE同族体は、胆汁酸などによってミセル化された後、腸管からリンパ管を経由
して吸収される。ビタミンEの吸収率は、ある報告では 51~86%と推定されたが 84)、21%あるいは 29%
という報告 85)もあり、現在のところビタミンEの人における正確な吸収率は不明である。
吸収されたビタミンE同族体は、キロミクロンに取り込まれ、リポプロテインリパーゼによりキロ
ミクロンレムナントに変換された後、肝臓に取り込まれる。肝臓では、ビタミンE同族体のうちα-ト
コフェロールが優先的にα-トコフェロール輸送たんぱく質に結合し、他の同族体は肝細胞内で代謝
される。肝細胞内でα-トコフェロール輸送たんぱく質により輸送されたα-トコフェロールは、VLDL
(very low density lipoprotein)に取り込まれ、再度、血流中に移行する 86)。また、ビタミンEの体内の
主要な代謝経路は主にシトクロム P-450 ファミリーの CYP4F2 による酵素的な経路である。この経路
では、クロマン環を保持したままフィチル側鎖が酸化されて短縮が連続的に起こり、カルボキシエチ
ルヒドロキシクロマン(CEHC)へと代謝される。これは主に肝臓で行われる 87)。
2 指標設定の基本的な考え方
多価不飽和脂肪酸の摂取量が増えると、多価不飽和脂肪酸に由来して発生する過酸化脂質の生成を
抑制するためにビタミンEの需要が高まる。この場合にビタミンEが十分に供給されないと、過酸化
によって引き起こされる、クレアチニン尿、赤血球膜の脆弱性及び脂質過酸化の増加などを引き起こ
す可能性がある。つまり、α-トコフェロールの必要量は多価不飽和脂肪酸摂取量に依存する。そこ
で、多価不飽和脂肪酸摂取量に対して適切なα-トコフェロールの摂取量を考慮しながら、日本人の
現状の摂取量を基に目安量を設定した。
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