「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (117 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
3-3-1 欠乏の回避
3-3-1-1 目安量の策定方法
・乳児(0~5 か月)(目安量)
この時期は、母乳(又は乳児用調製乳)から栄養を得ている。母乳中の脂肪濃度を 3.5 g/100 g とす
ると 3)、100 g 中の脂質由来のエネルギーは 3.5 g×9 kcal=31.5 kcal/100 g となる。母乳 100 g 中の総エ
ネルギーは 65 kcal であるので、脂肪エネルギー比率は以下のとおり 48.46%エネルギーとなり、丸め
処理を行って 50%エネルギーを目安量とした。
脂肪エネルギー比率(%エネルギー)=31.5/65=48.46%エネルギー
なお、0~5 か月児の 1 日当たりの脂質摂取量は、母乳中脂肪濃度(35.6 g/L)に基準哺乳量(0.78 L/
日)を乗じると 27.8 g/日となる。
・乳児(6~11 か月)(目安量)
6 か月頃の乳児は、離乳食への切替えが始まる時期であり、6~11 か月の乳児は母乳(又は乳児用
調製乳)と離乳食の両方から栄養を得ている。この時期は幼児への移行期と考え、以下のとおり、0~
5 か月児の目安量と 1~2 歳児の目安量(中央値:男児が 26.3%エネルギー、女児が 26.5%エネルギー:
表1参照)の中間値を用いると、37.4%エネルギーとなり、丸め処理を行って 40%エネルギーを目安
量とした。
脂肪エネルギー比率(%エネルギー)=〔48.46+(26.3+26.5)/2〕/2=37.4%エネルギー
3-3-2 生活習慣病との関連
脂質(総脂質)摂取量との関連が認められている生活習慣病は少ない。その関連が観察される場合
は次の 3 つの理由によるところが大きい。1 つ目は脂質が供給するエネルギーとの関連が認められる
場合(他のエネルギー産生栄養素に差や変化がなく、脂質摂取量だけに差や変化があった場合がこれ
に相当する)、2 つ目は脂質に含まれる脂肪酸の中でもその割合が高い飽和脂肪酸との関連が認めら
れる場合、3 つ目は炭水化物(特に糖)との関連が認められる場合(炭水化物(特に糖)摂取量と脂
質摂取量の間には通常かなり強い負の相関が存在するため)のいずれかである。
例えば、脂質(総脂質)摂取量の制限が体重減少に与え得る効果を検証した介入試験のメタ・アナ
リシスでは、脂質(総脂質)摂取量が少ないことが体重の低さ又は体重減少と関連していた 4)。しか
し、介入前の肥満度によってその効果が異なることを示した総説も存在し、肥満度の低い集団におい
ては、脂質(総脂質)摂取量を低く留める必要性が示されており 5)、観察研究をまとめたメタ・アナ
リシスでは循環器疾患死亡に関して有意な関連を認めていない 6)。また、脂質(総脂質)摂取量が循
環器疾患の発症及び死亡に与える影響を検証した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、脂質(総
脂質)摂取量を減らすことは循環器疾患の発症及び死亡に有意な関連を示さず、脂質の内容(脂肪酸
の種類)の調節や、脂質(総脂質)摂取量の低減によって飽和脂肪酸が減ることで循環器疾患発症リ
スクが低下する可能性を示唆した 6,7)。
107