「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (435 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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血清脂質への影響については、総食物繊維、水溶性の食物繊維を使用した多くの無作為化比較試験
のメタ・アナリシスで総コレステロール、LDL-コレステロール 76,77)の低下が示されている。したがっ
て、食物繊維の摂取は血清脂質の改善に有効であるが、その効果は 3 g/日の摂取量の増加で 5.0 mg/dL
程度であり、生活習慣病の重症化予防には 25〜29 g/日の摂取量で最も顕著な効果が観察されている 76)。
以上から、おおむね 25 g/日以上の食物繊維の摂取が勧められる。
2-2 低 HDL-コレステロール血症
介入試験をまとめたメタ・アナリシスによれば、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪
酸全てが HDL-コレステロールを有意に上昇させることが示されているが、その変化量は僅かであり、
有意な変化は認められていない 10,11)。一方、飽和脂肪酸を減らすことで総コレステロール、LDL-コレ
ステロールを低下させるが、
HDL-コレステロールに関しては一定ではないという報告が多い 10,13–19)。
また、HDL-コレステロールへの影響を飽和脂肪酸の炭素数別に検討したメタ・アナリシスによると、
炭素数が 12 の飽和脂肪酸(ラウリン酸)だけで有意な上昇が観察されている 12)。α-リノレン酸をサ
プリメントとして負荷して血清脂質の変化を観察した 17 の介入試験をまとめたメタ・アナリシスで
は、HDL-コレステロールの有意な低下を示したと報告されている 32)。しかし、この研究では摂取量
は報告されていない。別の介入試験のメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸を n-6 系脂肪酸や炭水化物
に置き換えることで HDL-コレステロールの低下が観察されている 11,12)。13 の介入試験のメタ・アナ
リシスでは 1%エネルギーのトランス脂肪酸を一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸に置き換えるこ
とで HDL-コレステロールの上昇が観察されている 68)。また、卵黄によるコレステロール摂取によっ
て、僅かながら HDL-コレステロールは増加するが、LDL-コレステロールの上昇の方が大きいことも
示唆されている 57)。
糖類の種類や構造、摂取方法等によって異なる生理学的特徴を示す指標の 1 つである食事性グリセ
ミック・ロード(glycemic load)と HDL-コレステロール値が負の関連を示した研究がある 78,79)。しか
し、上記の研究が全て現実的にどの程度の意味を持つのかは、十分には明らかにされていない。
アルコール摂取量の増加に伴って HDL-コレステロールは上昇する 80,81)が、実験レベルでは HDL の
コレステロール引き抜き機能はむしろ低下するため、アルコールによる HDL-コレステロール上昇が
及ぼす心血管疾患予防の効果はないと考えられる 82)。疫学的には多量飲酒は虚血性心疾患や脳卒中の
危険因子であり、少量飲酒によるこれらの疾患や総死亡リスクの予防効果も現在は否定的である 83–
86)。血圧上昇、脳出血や発がんなどのリスク上昇による健康障害 84,85)を考慮すると、アルコールはで
きるだけ控えることが望ましい。
2-3 高トリグセライド血症
2-3-1 炭水化物、脂質
炭水化物から、飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の別にかかわらず、それぞれの
脂肪酸に置き換えると、血清トリグリセライドが有意に減少することがメタ・アナリシスで示されて
いる 11)。そして、その影響は互いにほぼ等しく、5%エネルギーの炭水化物をそれぞれの脂肪酸に置
き換えると、血清トリグリセライドが 10~12 mg/dL 程度減少するとされている。研究数を増やした
別のメタ・アナリシスでも、ほぼ同様の結果が得られている 12)。さらに、飽和脂肪酸の炭素数別に検
討したメタ・アナリシスでも、飽和脂肪酸の違い(炭素数による違い)は影響しないと報告されてい
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