「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (262 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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3-2-1 耐容上限量の策定
カリウムは多くの食品に含まれているが、腎機能が正常であり、特にカリウムのサプリメントなど
を使用しない限りは、過剰摂取になるリスクは低いと考えられる。そのため、耐容上限量は設定しな
かった。
3-3 生活習慣病の発症予防
3-3-1 主な生活習慣病との関連
コホート研究のメタ・アナリシス 45)では、カリウム摂取の増加は脳卒中のリスクを減らしたが、心
血管疾患や冠動脈疾患のリスクには有意な影響はなかった。さらに、一般集団を対象とした疫学研究
で、ナトリウム/カリウム摂取比が心血管病リスク増加や全死亡に重要であるという報告もあり 46)、
カリウムの摂取は食塩との関連で評価すべきであると考えられる。2012 年に発表された WHO のガイ
ドライン 47)では、カリウム摂取量 90 mmol(3,510 mg)/日以上を推奨している。これは WHO が行っ
たメタ・アナリシスにおいて、90~120 mmol/日のカリウム摂取で収縮期血圧が 7.16 mmHg 有意に低
下したことを根拠としている。全米科学・工学・医学アカデミーではアメリカの食事調査における摂
取量の中央値(女性は 2.6 g/日、男性は 3.4 g/日)に基づく目安量を設定しているが、いわゆる目標量
に当たる CDRR(Chronic Disease Risk Reduction Intake)の値は示していない 8)。EFSA は目安量として
3,500mg/日 48)、北欧諸国の食事摂取基準はこの EFSA の値を支持している 49)。
3-3-2 目標量の策定方法
・成人・高齢者(目標量)
WHO のガイドライン 47)では、成人の血圧と心血管疾患、脳卒中、冠動脈性心疾患のリスクを減ら
すために、食物からのカリウム摂取量を増やすことを強く推奨し、カリウム摂取量と血圧、心血管疾
患などとの関係を検討した結果、これらの生活習慣病の予防のために 3,510 mg/日のカリウム摂取を
推奨している。また、2016 年に発表された量・反応メタ・アナリシスでは 50)、カリウム摂取と脳卒中
の発症の間には逆相関が確認され、カリウム摂取量が 3,510 mg/日で脳卒中のリスクが最も低いこと
が報告されている。日本人は、ナトリウムの摂取量が多く、高血圧の発症予防を積極的に進める観点
からもこの値が支持される。したがって、WHO のガイドラインで示された値を目標と考えることと
した。
しかし、日本人の現在のカリウム摂取量は、これらよりもかなり少なく(表2)、WHO の値を目
標量として掲げても、その実施可能性は低いと言わざるを得ない。そこで、次の方法で目標量を算定
することとした。
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査に基づく日本人の成人(18 歳以上)におけるカリウム摂取
量の地域ブロック・性・年齢区分を調整した中央値(2,211 mg/日)と 3,510 mg/日との中間値である
2,861mg/日を、目標量を算出するための参照値とした。次に、成人(18 歳以上男女)における参照体
重(58.6 kg)と性別及び年齢区分ごとの参照体重の体重比の 0.75 乗を用いて体表面積を推定する方法
により外挿し、性別及び年齢区分ごとに目標量を算定した。
具体的には、
2,861 mg/日×(性別及び年齢区分ごとの参照体重 kg÷58.6 kg)0.75
とした。次に、この方法で算出された値と、現在の摂取量の中央値(平成 30・令和元年国民健康・栄
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