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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (221 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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れていない。そのために、耐容上限量の再考を促す意見もあるが 105)、現時点で新たな最低健康障害
発現量や健康障害非発現量を採用するのは困難と判断し、食事摂取基準ではこの方法を踏襲すること
にした。
この値に各年齢区分の参照体重を乗じ、性別及び年齢区分ごとの耐容上限量を算出し、平滑化した。
葉酸(folic acid)の耐容上限量に関する情報はその多くが女性に限られている。そのため、男性にお
いても女性の値を採用した。
・乳児(耐容上限量)
サプリメント等による摂取はないため、耐容上限量は策定しなかった。

3-3 生活習慣病の発症予防
通常の食事から摂取した葉酸(folate)の摂取量と脳卒中の発症率、心筋梗塞など循環器疾患の死亡
率との関連は観察研究、特にコホート研究での報告が複数あり、有意な負の関連を認めている 106,107)。
したがって、循環器疾患の発症予防に葉酸(folate)の積極的な摂取が有用である可能性は高い。しか
しながら、明確な閾値は観察されていない。また、発症予防を目的とした介入試験で参照に値するも
のは見出せなかった。以上の理由から、目標量は設定しなかった。

4 生活習慣病の重症化予防
心筋梗塞や脳卒中など循環器疾患の既往歴を有する患者を対象として葉酸のサプリメントを用い
た介入試験(無作為割付比較試験)は相当数行われている 108–111)。しかし、通常の食品から摂取でき
る摂取量の範囲で行われた研究は乏しい。

5 神経管閉鎖障害発症の予防
胎児の神経管閉鎖障害は、受胎後およそ 28 日で閉鎖する神経管の形成異常であり、臨床的には無
脳症、二分脊椎、髄膜瘤などの異常を呈する。神経管閉鎖障害の発生率は、2011~2015 年において 1
万出生(死産を含む)当たり 6 程度で推移していると報告されている 112)。しかし、妊娠中絶も含め
るとその発生率は 1.5 倍程度になるのではないかとする報告もある 113)。
受胎前後に葉酸(folic acid)のサプリメントを投与することによって神経管閉鎖障害のリスクが低
減することは数多くの介入試験で明らかにされている 114–122)。また、神経管閉鎖障害の発症予防に有
効な赤血球中葉酸濃度を達成するために必要なサプリメントからの葉酸(folic acid)の摂取量の増加
は、葉酸(folate)として 400 µg/日であるとした研究がある 123)。そこで、食品からの葉酸(folate)の
摂取に加えて、通常の食品以外の食品に含まれる葉酸、すなわち、いわゆる栄養補助食品から 400 µg/
日の葉酸(folic acid)を摂取すれば、神経管閉鎖障害の発症リスクが集団としてみた場合に低減する
ことが期待でき、これを神経管閉鎖障害の発症予防のために望まれる量とした。
多くの場合、妊娠を知るのは神経管の形成に重要な時期(受胎後およそ 28 日間)よりも遅い。し
たがって、妊娠初期だけでなく、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性は、上記の値を
摂取することが神経管閉鎖障害発症の予防に重要である。しかしながら、この障害の原因は葉酸(folate)
の不足だけでなく複合的なものであるため、葉酸(folic acid)のサプリメント又は葉酸(folic acid)を
強化した食品の利用だけでその発症を予防できるものではないこと、上記の量を摂取すれば必ず予防
できるというわけではないこと、また、葉酸(folic acid)のサプリメント又は葉酸(folic acid)が強化
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