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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (465 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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いては、たんぱく質制限を緩和しても良いことや、そのたんぱく質摂取量の上限の目安が示されてい
る。
一方で同提言では、サルコペニアやフレイルは比較的新しい疾患概念のため、これらを合併した
CKD に直接介入したエビデンスは必ずしも十分ではないこと、さらには、サルコペニアの予防や改善
のためには、十分なたんぱく質摂取量(1.0 g/kg 体重/日以上)が有効と考えられていることから、CKD
の食事療法としてのたんぱく制限とは両立しないことが冒頭に述べられている。
よって、本提言を参照するときには、十分ではないエビデンスに基づいて、現状において分かる範
囲で記載されたものであること、そして何より、サルコペニアやフレイルの「予防」のためではなく、
標準的な食事療法を実施している CKD の経過中にサルコペニアを合併した場合の食事療法の考え方
を検討したものであることに留意しなければならない。また最近、CKD を対象として行われた研究に
おいて、十分なエネルギー摂取量が維持されていれば、たんぱく質制限を行っても筋代謝には悪影響
を及ぼさない可能性 52)や、運動療法を併用している場合には骨格筋の増大や筋力の増加の可能性 53)
も報告されていることから、より詳細な検討が必要である。
2-3-4 糖尿病性腎症におけるたんぱく質制限
国外においては、アメリカ糖尿病学会や KDIGO のガイドラインなどで、糖尿病性腎症に対しては、
0.8 g/kg 理想体重/日のたんぱく質制限が推奨されている 54,55)。そして、主にアルブミン尿を呈してい
るステージ G1~G3 の症例を対象とした、たんぱく質制限に関するメタ・アナリシスでは、その尿蛋
白減少効果が示されている 56)。我が国では、日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド 2022-2023」にお
いて、腎症の発症や進展抑制の観点から、腎症の第 2 期のたんぱく質摂取量を 20%エネルギー以下に
することが望ましいとされている 57)。これは、たんぱく質の過剰摂取による耐糖能異常や心血管疾患
や脳卒中の増加などのリスクを回避するという考えにも基づいている 58)。
この点に関連して、腎症 1 期を対象とした、25%のエネルギー制限食と標準的な糖尿病食とを比較
した無作為化比較試験では、25%エネルギー制限食群ではたんぱく質摂取量が 17.7%から 20.1%エネ
ルギーに増加したものの、標準的な糖尿病食群と比較して糸球体過剰濾過は軽減し、尿中アルブミン
も前後比較で減少していた 59)。腎症 2 期の症例においても同様の検討が今後必要であるが、20%エネ
ルギー以下のたんぱく質摂取は妥当な推奨範囲と考えられる。
一方で、日本糖尿病学会から報告されたコンセンサスステートメントでは、腎症 1 期や 2 期であっ
ても、eGFR が 30~45 ml/min/1.73m2 で進行性に腎機能低下する症例や、eGFR が 30 ml/min/1.73m2 未
満の症例など末期腎不全への進展リスクが高い症例では、0.6~0.8 g/目標体重 kg/日のたんぱく質制限
を提示している(75 歳以上やサルコペニア・フレイルのリスクがある症例は除く)60)。これは「慢性
腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」6)の考え方に矛盾していない。
腎症 3 期は顕性アルブミン尿(持続性蛋白尿)への進展により定義される。我が国の研究では、顕
性アルブミン尿又は eGFR が 30 ml/min/1.73m2 未満の症例を対象に、推定たんぱく質摂取量と腎代替
療法との関係を解析したところ、たんぱく質摂取量 0.1 g/標準体重 kg/日の減少ごとに腎代替療法への
進展のリスクが低下することや、0.7 g/標準体重 kg/日未満のたんぱく質摂取量が腎代替療法開始のリ
スク低下と有意に関連することが示された 61)。また、たんぱく質制限に関する 13 の無作為化比較試
験のメタ・アナリシスにおいて、その eGFR 低下の抑制効果が、特に顕性アルブミン尿群で認められ
た 62)。日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド 2022-2023」では、腎症 3 期において 0.8~1.0 g/kg 標準体
重/日のたんぱく質制限を考慮しても良いとされている 57)。さらに、前述の日本糖尿病学会によるコ

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