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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (176 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 基本的事項
ビタミンEの過剰症としては、出血傾向の上昇が挙げられる。ビタミンEの過剰に対応する生体指
標は確立されていない。血中α-トコフェロール濃度及び尿中α-CEHC 排泄量が使用できる可能性が
あるが、今回は採用しなかった。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者・小児(耐容上限量)
ヒトを対象とした高用量のビタミンE摂取に関する研究の主要な副作用として血液凝固能の低下
が対象とされている。高用量のビタミンE(最高で 727 mg/日)(all-rac-α-tocopherol)を 4 か月間摂
取させた結果、いずれの用量でもプラセボ群と比べてプロトロンビン時間の有意な延長は認められな
かった。この研究では一般栄養状態、肝酵素機能、甲状腺ホルモン濃度、クレアチニン濃度、血清自
己抗体、好中球によるカンジダアルビカンスに対する防御作用も評価されており、いずれの有害事象
も認められなかった 107)。その他、健康なヒト集団にビタミンEを与えた他の研究でも類似の結果が
得られている 108–111)。さらに、ビタミンEの耐容上限量は、トコフェロール当量 540~800 mg/日が適
切と考えられるとのレビューもある 112)。一方、ビタミンKが不足している状況では、高用量のα-ト
コフェロールで血液凝固能に障害が起こることが報告されている 23)。
以上より、健康な成人のα-トコフェロールの健康障害非発現量は、現在のところ 800 mg/日と考え
られる。そして、最低健康障害発現量が明確でないことから不確実性因子を 1 として、小児を含め、
800 mg/日と参照体重を用いて体重比から性別及び年齢区分ごとに耐容上限量を算出した。外挿の基
となる体重には、日本人を対象とした研究 111)の 62.2 kg を用いた。ただし、800 mg/日を超えた場合の
過剰摂取による健康障害について、明確な科学的根拠があるとはいえないため、算定値が 800 mg/日
を超える場合には 800 mg/日を設定した。
・乳児(耐容上限量)
乳児については、耐容上限量に関するデータがほとんどないことや、実際上、母乳や離乳食では過
剰摂取の問題が生じないことから、耐容上限量を設定しないこととした。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
妊婦・授乳婦については、耐容上限量に関するデータがほとんどないことから、耐容上限量を設定
しないこととした。

3-3 生活習慣病の発症予防
血中α-トコフェロール濃度と心血管疾患による死亡リスク 113)、ビタミンE摂取量と脳卒中リス
ク 114)、骨折リスク 115)に関する報告がある。しかしながら、食事由来のビタミンE摂取者に限定した
研究報告は乏しく、また、その結果も十分に一致していない。
また、耐容上限量よりも低用量のビタミンE補給(300 mg/日程度)であっても、出血性脳卒中リス
クや 33,116)、前立腺がんのリスクが上昇したとの報告もあるが 117)、報告数は少なく、十分な科学的根
拠は得られていない。以上から目標量の設定を見送った。

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