「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (254 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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を塩化ナトリウム(NaCl)として摂取している。そこで、ナトリウムの摂取量を食塩相当量で表現す
ることが多い。食塩相当量を通称として食塩と呼ぶこともあり、塩分という呼び方も用いられている。
しかし、塩分には、食塩又は食塩相当量としての意味はない。そのため、塩分という呼び方には注意
を要する。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
適切な身体機能のために必要な最低限のナトリウム摂取量については十分に定義されていないが、
世界保健機関(WHO)のガイドラインには、僅か 200~500 mg/日であると推定されると記載されてい
る 3)。
ナトリウムについては、日本人の食事摂取基準(2020 年版)と同様に、不可避損失量を補うという
観点から推定平均必要量を設定した。前回の改定以降の新しい文献を検索したが、特に新しい知見は
報告されていないため、前回までの策定方法を踏襲することとした。ただし、前回までの策定に用い
た論文は古く、実験の精度管理が十分でないことが懸念されるため、その値の信頼度はあまり高くな
いものと考えられる。また、後述するように、算出された推定平均必要量は、平成 30・令和元年国民
健康・栄養調査における摂取量分布の 1 パーセンタイル値をも下回っている。したがって、活用上は、
推定平均必要量はほとんど意味を持たないが、参考として算定し、推奨量は算定しなかった。
3-1-2 推定平均必要量の策定方法
・基本的な考え方
腎臓の機能が正常であれば、腎臓におけるナトリウムの再吸収機能によりナトリウム平衡は維持さ
れ、ナトリウム欠乏となることはない。ナトリウム摂取量を 0(ゼロ)にした場合の、尿、便、皮膚、
その他から排泄されるナトリウムの総和が不可避損失量であり、摂取されたナトリウムはその大部分
が小腸から吸収されるので、不可避損失量を補うと必要量が満たされると考えられてきた 1)。
・成人・高齢者(推定平均必要量)
実際には通常の食生活においてナトリウム摂取量を 0(ゼロ)にすることは不可能である。古典的
研究をレビューした結果として、座位で発汗を伴わない仕事に従事している成人のナトリウム不可避
損失量は、便:0.023 mg(0.001 mmol)/kg 体重/日、尿:0.23 mg(0.01 mmol)/kg 体重/日、皮膚:0.92
mg(0.04 mmol)/kg 体重/日、合計:1.173 mg(0.051 mmol)/kg 体重/日と試算されている 4)。これを
18~29 歳の男性に適用すると、73.9(1.173×63.0)mg/日あるいは、3.2(0.051×63.0)mmol/日となる。
1989 年のアメリカの栄養所要量 5)では、成人の不可避損失量として 115mg/日(5 mmol/日)、1991 年
のイギリスの食事摂取基準 6)では 69~490 mg/日(3~20 mmol/日)を採用していた。このように、成
人のナトリウム不可避損失量は 500 mg/日以下で、個人間変動(変動係数 10%)を考慮に入れても約
600 mg/日(食塩相当量 1.5 g/日)と考えられる。この考え方を根拠に 600 mg/日(食塩相当量として
1.5g/日)を成人における男女共通の推定平均必要量とした。しかし、実際には、通常の食事では日本
人の食塩摂取量が 1.5 g/日を下回ることはない。
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