「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (141 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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よって、糖類に対し目標量を定めるか否かは検討する必要がある。糖類のうちでも、総摂取量に当
たる total sugar(総糖類)ではなく added sugar(添加糖類:食品の調理加工中に添加された糖類やシ
ロップ)あるいは free sugar(遊離糖類:added sugar に果汁を加えたもの)の健康影響が多く研究され
ており 18)、各国・組織で糖類摂取に対し定められている基準値は、多くの場合、added sugar 又は free
sugar に対するものである 19)。例えば世界保健機関(WHO)は、free sugar の摂取量に関する勧告を出
しており、総エネルギーの 10%未満、望ましくは 5%未満に留めることを推奨している 20)。total sugar
摂取量に対して推奨される量を定めている国としてはフランス(100 g/日未満)、韓国(総エネルギー
の 10~20%)が挙げられる。
我が国では、日本食品標準成分表の炭水化物成分表に単糖や二糖類など糖の成分値が収載されてい
るが、全ての収載食品についてではない。また、ある食品に含まれる糖類について、その由来ごとの
成分値、すなわち added sugar や free sugar の成分値は示されていない。よって、個人及び集団におけ
る added sugar 及び free sugar の摂取実態を簡便に推定することは現時点では困難である。
日本食品標準成分表における糖類の欠損値を補完し、total sugar 以外に added sugar や free sugar の
成分値も追加した上で日本人における糖類摂取量を調べた研究は存在する 21–23)。例えば、成人におけ
る糖類の摂取量の平均値は、男性で総エネルギー摂取量の 10.7%/6.1%(total/added sugar)、女性で
13.6%/7.4%、男児(8~14 歳)で 12.3%/5.8%、女児(同)で 12.8%/6.0%と報告されている 22)。しかし、
報告数は少なく、日本人における糖類の摂取実態が十分に明らかにされているとは言い難い。
このように、現在の日本では added sugar 及び free sugar の摂取量を容易に推定することができず、
added sugar 及び free sugar の摂取量に関する指標を定めることは困難である。また、報告されている
日本人の added sugar あるいは free sugar の摂取量の平均値は低く、過半数の日本人では糖類摂取量が
他国で推奨されている値よりも低い可能性がある。よって、指標を定める意義や指標の設定方法は慎
重に検討する必要があり、今回は糖類に対する目標量の設定は見送ることとした。なお、total sugar に
対する目標量を定めることも考えられるが、前述のように研究数が少ないこと及び基準の国際的整合
性の観点から、この方法も選択しなかった。
一方で、一部に糖類摂取量の非常に多い日本人も存在すること 21)、free sugar 摂取量が増えること
でビタミン・ミネラル類の摂取量が減少する現象(nutrition dilution)が日本人でも観察されることが
報告されている 24)。糖類の摂取実態及びその変化には注意を払う必要がある。
2-3 食物繊維
炭水化物は前述のように多様な化合物を含み、健康影響を考える際には総体としての摂取量ではな
くその質が問われるようになってきた。WHO のガイドラインでは、炭水化物摂取量そのものではな
く炭水化物摂取源となる食品の種類と摂取量、食物繊維摂取量について推奨される事項が示されてい
る 25)。
食物繊維は、数多くの生活習慣病の発症率又は死亡率との関連が検討されており、メタ・アナリシ
スによって数多くの疾患との間に有意な負の関連が報告されているまれな栄養素である。代表的なも
のとして、総死亡率 26)、心筋梗塞の発症及び死亡 26)、脳卒中の発症 26)、循環器疾患の発症及び死亡
26)、2 型糖尿病の発症 26)、乳がんの発症 26,27)、胃がんの発症 28)、大腸がんの発症 26)などがある。また、
メタボリックシンドロームの発症率との関連を検討したメタ・アナリシスも存在する 29,30)。これらの
報告は、総合的には食物繊維摂取量が多いほどこれらの発症率や死亡率が低くなる傾向を認めている。
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