「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (56 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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策定上の課題と活用上の課題に分けて記載する。
5-1 策定上の課題
食事摂取基準が参照すべき分野(人間栄養学、栄養疫学、公衆栄養学、予防栄養学)の研究論文数
は、近年、増加の一途をたどっている。特に、当該分野の研究論文を扱ったシステマティック・レビ
ュー及びメタ・アナリシスの増加は目覚ましい。食事摂取基準の策定作業においてもこれらを積極的
かつ正しく活用することが提唱されており、数多くの試みがなされている 52)。ところが、我が国にお
ける当該分野の研究者の数とその質は、論文数の増加と食事摂取基準の策定に要求される能力に対応
できておらず、近い将来、食事摂取基準の策定に支障を来すことが危惧される。当該分野における質
の高い研究者を育成するための具体的な方策が早急に講じられなければならない。
食事摂取基準の各指標は、摂取不足の回避、過剰摂取による健康障害の回避及び生活習慣病等の発
症予防を目的に定められている。日本において臨床的に明らかな単独栄養素の欠乏症や過剰症の者を
見ることは少ない。一方で、測定技術の進歩により、臨床症状出現前の生体指標の変化が捉えられる
ようになってきた。今後は各指標策定における生体指標の有効活用について検討を進める必要がある。
また、日本における近年の疾病構造を考慮すると生活習慣病等の発症予防の重要度が増しているが、
栄養素固有の影響で、比較的短期間で生じる栄養素の欠乏症や過剰症と比べ、生活習慣病等をアウト
カムとした目標値などの指標の策定についてはその方法論自体に検討の余地がある 2)。各指標の定義
を必要に応じアップデートし、その意味合いの理解を促進する必要がある。
さらに、食事摂取基準は活用を見据えて策定されるべきものである。現在の日本人のエネルギー・
栄養素摂取状況と食事摂取基準の網羅的な比較は一部で実施されているが 53)、より積極的に行われる
必要があり、摂取実態の現状に関する知見は共有されるべきである。その上で、基準の策定及び活用
法の検討が行われることが望ましい。
5-2 活用上の課題
個人を対象とする場合も、集団を対象とする場合も、食事摂取基準の適切な活用には正しい摂取量
推定に基づいた食事評価が必要である。ところが、食事摂取基準の活用に適した食事調査法の開発(そ
のための研究を含む)と食事評価に関する教育と普及は十分とは言い難い。このため、適切な食事調
査法の開発研究とその結果を踏まえた適切な食事評価方法についての教育・普及活動が、必須かつ急
務の課題である。
献立等の作成あるいは摂取量推定では、多くの場合日本食品標準成分表が使用される。日本食品標
準成分表で採用されている測定法の変化により、エネルギー及びいくつかの栄養素の食品中成分値に
変化が生じている。日本人の食事摂取基準(2025 年版)策定時に根拠とした研究論文の多くは、旧来
の測定法(日本食品標準成分表(七訂)以前に採用されていた測定法)に基づく食品中栄養素含有量
を栄養計算に用いていると考えられる。よって日本人の食事摂取基準(2025 年版)で示された基準値
と、日本食品標準成分表(八訂)を用いて栄養計算を行った結果を比較する際には、測定法の違いに
よる誤差が発生することがあり、注意が必要である。この誤差への対応には、様々な集団での食事に
ついて、日本食品標準成分表(七訂)と、それ以降の最新版の日本食品標準成分表を用いた場合の栄
養計算結果の差に関する検討が複数必要である。
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