「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (323 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
ヨウ素(iodine)は原子番号 53、元素記号 I のハロゲン元素の 1 つである。
1-2 機能 135)
人体中ヨウ素の 70~80%は甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成する。甲状腺ホルモンは、生殖、
成長、発達等の生理的プロセスを制御し、エネルギー代謝を亢進させるとともに、胎児の脳、末梢組
織、骨格等の発達と成長を促す。慢性的なヨウ素欠乏は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌亢進、
甲状腺の異常肥大、又は過形成(いわゆる甲状腺腫)を起こし、甲状腺機能を低下させる。妊娠中の
ヨウ素欠乏は、死産、流産、胎児の先天異常及び胎児甲状腺機能低下(先天性甲状腺機能低下症)を
招く。重度の先天性甲状腺機能低下症は全般的な精神遅滞、低身長、聾唖、痙直を起こす。また、重
度の神経学的障害を伴わず、甲状腺の萎縮と線維化を伴う粘液水腫型胎生甲状腺機能低下症を示すこ
ともある。
1-3 消化、吸収、代謝
食卓塩に添加されたヨウ素(ヨウ化物又はヨウ素酸塩)は、ヨウ化物の形態で、消化管でほぼ完全
に吸収されるが 136)、昆布製品等の食品に含まれるヨウ素の吸収率は遊離のヨウ化物よりも低いと推
定されている 137,138)。ヨウ化物イオンは能動的に甲状腺に取り込まれ、酸化、チログロブリンのチロ
シン残基への付加、プロテアーゼの作用によるヨウ素付加チロシンの遊離、ペルオキシダーゼによる
ヨウ素付加チロシンの重合を経て甲状腺ホルモンとなる 135)。甲状腺ホルモンから遊離したヨウ素及
び血漿中ヨウ素は、最終的にその 90%以上が尿中に排泄される。世界保健機関(WHO)は、尿中ヨウ
素は直近のヨウ素摂取量の良い指標であるとしているが 139)、厳密にはヨウ素吸収量の指標と考える
べきである。
2 指標設定の基本的な考え方
後述のとおり、日本人のヨウ素の摂取量と摂取源は特異的であるため、欧米の研究結果を参考にす
るには注意が必要である。しかし、日本人において、推定平均必要量の算定に有用な報告がないため、
欧米の研究結果と食品中ヨウ素の吸収率に基づいて成人と小児の推定平均必要量と推奨量を算定し
た。
一方、耐容上限量に関しては、日本人がヨウ素を食卓塩ではなく一般の食品から摂取していること、
通常の食生活においてヨウ素過剰障害がほとんど認められないことから、日本人のヨウ素摂取量と日
本人を対象にした研究に基づき策定した。
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