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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (419 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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2-4 カリウム
野菜、果物、低脂肪乳製品が豊富な食事パターンである DASH 食 8,52)は、その血圧低下効果が証明
されているが、カリウムはその主要な栄養素の 1 つである。介入試験のメタ・アナリシスでは、カリ
ウム摂取量増加は高血圧者では有意な血圧低下効果が認められた 53)。コホート研究のメタ・アナリシ
ス 54)では、カリウム摂取量が高いほど脳卒中のリスクが低下したが、冠動脈疾患のリスクには有意の
関連はなかった。別のメタ・アナリシスでは、カリウム摂取量が高いほど心血管イベントのリスクが
有意に低下した 17)。一方、近年、ナトリウム/カリウム摂取比あるいは尿ナトリウム/カリウム排泄
比が循環器疾患リスクと関連することが報告されている 17,55–57)。我が国でもナトリウム/カリウム比
と高血圧及び循環器疾患リスクとの正の関連が報告されている 56,58)。前述の前向きコホート研究のメ
タ・アナリシスでは、尿中カリウム排泄量及び尿ナトリウム/カリウム排泄比のそれぞれの第 4 四分
位群の循環器疾患リスクは、各第 1 四分位群の 0.69 倍、1.62 倍であることが示された 17)。すなわち、
カリウムは、食塩過剰摂取の血圧上昇などの作用に拮抗していると考えられている。2012 年の WHO
のガイドライン 59)では、血圧低下及び脳卒中リスク低下のためにカリウム摂取量 90 mmol(3,510 mg)
/日以上が推奨されており、また、WHO ガイドラインの推奨摂取量を達成した場合、ナトリウム/カ
リウム摂取比はほぼ 1 対 1(単位は mmol/mmol)になり、健康への好影響をもたらすとしている。
なお、腎障害を有する人では高カリウム血症を来し得るので、カリウムの積極的摂取は避けるべきで
ある。「高血圧治療ガイドライン 2019」1)では、野菜・果物の積極的摂取を推奨している(カリウム
制限が必要な腎障害患者を除く)。
近年、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムで置換した代替塩によるナトリウム摂取量の減少とカ
リウム摂取量の増加は循環器疾患の発症及び総死亡を減少させることが報告された 60)。また、代替塩
の効果を検討したメタ・アナリシスでも、代替塩による血圧低下、循環器疾患の発症及び死亡のリス
ク低下が示されている 61)。

2-5 カルシウム
カルシウムも DASH 食 8,52)の主要な栄養素の 1 つである。これまで多くの疫学研究で、カルシウム
摂取量の増加に伴い血圧が低下することが示されている 62,63)。2023 年のメタ・アナリシスでは、162
~2000 mg/日のカルシウム補給で有意な血圧低下を示すことが報告されている 64)。また、別のメタ・
アナリシスでもカルシウム補給による有意な血圧低下作用が示されているが 65)、その程度は大きくな
い。

2-6 マグネシウム
マグネシウムも DASH 食 8,52)の主要な栄養素の 1 つである。介入試験のメタ・アナリシスでは、マ
グネシウム補給(中央値 368 mg/日)により血圧は 2.00/1.78 mmHg 低下することが示された 66)。また、
別のメタ・アナリシスでは、マグネシウム補給(212~636 mg/日)による正常血圧者の血圧低下が示
された 64)。一方、系統的レビューでは、血圧管理不良の高血圧患者ではマグネシウム補給(240 mg/日
以上)は血圧を低下させること、未治療高血圧患者の血圧を低下させるには 600 mg/日以上のマグネ
シウム補充が必要であることが示された 67)。

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