「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (204 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
ナイアシンとは、狭義ではニコチン酸とニコチンアミド(図5)を指し、広義ではナイアシン活性
を有する化合物の総称である。ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)及びニコチンアミド
アデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が補酵素として機能する。通常の食品には、ニコチン酸と
ニコチンアミドのほかに、NAD 及び NADP の形態でも存在する。いずれも消化管でニコチンアミド
に消化された後、体内に取り込まれるため、ナイアシンと等モルの活性を示す。
ナイアシンは食品からの摂取以外に、生体内でトリプトファン(図5)からも合成される。ニコチ
ンアミドとニコチン酸の総量であるナイアシン量と、体内でトリプトファンから生合成されるナイア
シン量との合計をナイアシン当量という。トリプトファンのナイアシンとしての活性が重量比で 1/60
であるので、ナイアシン当量は以下の式から求められる。
ナイアシン当量(mgNE)=ナイアシン(mg)+1/60 トリプトファン(mg)
食事摂取基準はナイアシン当量(niacin equivalent:NE)という単位を用いて設定した。日本食品標
準成分表(七訂)1)に従い、食事摂取基準の数値をニコチン酸相当量として示した。
COOH
図5
CONH2
CH2
N
N
N
H
ニコチン酸
ニコチンアミド
トリプトファン
CH
COOH
NH2
ニコチン酸(C6H5NO2、分子量=123.1)、ニコチンアミド(C6H6N2O、分子量=122.1)、
トリプトファン(C11H12N2O2、分子量=204.2)の構造式
1-2 機能
ナイアシンは、NAD 及び NADP の形態で、酸化還元反応を触媒する酵素の補酵素として電子の授
受を行う。ナイアシンは、解糖系、クエン酸回路(TCA 回路)、電子伝達系、脂肪酸のβ酸化、糖新
生経路、脂肪酸合成経路、ステロイドホルモン合成経路、アルコール代謝、ビタミンC、ビタミンE
を介する抗酸化系など様々な代謝経路に関与し、特にエネルギー産生栄養素代謝及びエネルギー産生
において重要な役割を果たす。また、NAD は ADP-リボシル化反応の基質として、DNA の合成及び
修復、細胞分化に関与している。ナイアシンが欠乏すると、ナイアシン欠乏症(ペラグラ)が発症す
る。ペラグラの主症状は、皮膚炎や下痢、精神神経症状である。
1-3 消化、吸収、代謝
生細胞中のナイアシンは主に NAD 及び NADP として存在する。食品中の NAD 及び NADP は、食
品を調理・加工する過程及び消化管内でニコチンアミドに加水分解される。また、動物性食品ではニ
コチンアミド、植物性食品ではニコチン酸としても存在する。ニコチンアミド、ニコチン酸は小腸か
ら吸収される。穀物中のニコチン酸の多くは糖質と結合した難消化性の結合型ニコチン酸として存在
する 24)。消化過程は食品ごとに異なり、同時に摂取する食品の影響も受ける。我が国で食されている
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