「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (420 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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DASH 食 8,52)では、魚を増加させており、
魚油由来の長鎖 n-3 系脂肪酸〔エイコサペンタエン酸
(EPA)、
ドコサヘキサエン酸(DHA)、ドコサペンタエン酸(DPA)など〕は要素の 1 つとなっている。これ
に関連して「高血圧治療ガイドライン 2019」1)では、多価不飽和脂肪酸の積極的摂取が推奨されてい
る。我が国を含む国際共同研究 INTERMAP からの報告 68)などの観察研究で、n-3 系脂肪酸の摂取量
が多い者は血圧が低いことが示されている。また、EPA、DHA、DPA の総和の血中レベルが高い者は
血圧が低いという報告もある 69)。INTERMAP では、植物油由来のα-リノレン酸を含む n-3 系脂肪酸
摂取量は日本人では約 3 g/日、EPA と DHA の合計が約 1 g/日であり、欧米に比べるとかなり摂取量
が多い 68)。介入試験のメタ・アナリシスでは、2~3 g/日の n-3 脂肪酸(EPA+DHA)摂取による血圧
低下が示された 70)。一方、別のメタ・アナリシスでは、n-3 系脂肪酸の摂取を増加させても血圧には
影響しないとしている 71)。
n-3 系脂肪酸摂取による循環器疾患リスク低下を示す観察研究の報告は国際的に多く、血圧低下以
外のメカニズムも推測されている。
魚油由来 n-3 系脂肪酸摂取が世界でも特に多い日本人においても、
コホート研究において心筋梗塞、脳卒中、心不全などのリスク低下が報告されている 72–74)。一方、介
入試験のメタ・アナリシスでは、n-3 系脂肪酸摂取は虚血性冠動脈疾患のリスクを低下させるとした
が、エビデンスレベルは低から中等度にとどまっている 71)。n-3 系脂肪酸摂取の長期にわたる循環器
疾患予防効果については、更なる知見の集積が必要である。
2-8 その他の脂質
血圧低下効果を有する食事パターンである DASH 食 8,52)では、総脂肪、飽和脂肪酸、食事性コレス
テロールを減少させている。INTERMAP では、食事性コレステロール摂取量と血圧の正の関連、n-6
系脂肪酸(リノール酸)摂取量と血圧の負の関連が報告されている 75,76)。30 歳以上の 120~159/80~
99 mmHg の者を対象にした介入試験である OmniHeart 研究 77)では、炭水化物が豊富な食事に比べて
不飽和脂肪酸が豊富な食事において血圧低下を認めている〔炭水化物が豊富な食事は炭水化物 58%、
脂質 27%(一価不飽和脂肪酸 13%、多価不飽和脂肪酸 8%)、不飽和脂肪酸が豊富な食事は炭水化
物 48%、脂質 37%(一価不飽和脂肪酸 21%、多価不飽和脂肪酸 10%)〕。不飽和脂肪酸(一価及び多
価)が降圧作用を有する可能性がある。一方、介入試験のメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸摂取量
の減少循環器疾患のリスクを 17%低下させるが、血圧への影響は認められなかったと報告している 78)。
「高血圧治療ガイドライン 2019」1)では、飽和脂肪酸、食事性コレステロールの摂取を控え、多価不
飽和脂肪酸の積極的摂取を推奨している。
2-9 食物繊維
DASH 食 8,52)では、野菜と果物を増加させており、食物繊維は要素の 1 つとなっている。「高血圧
治療ガイドライン 2019」1)では、野菜・果物の積極的摂取が推奨されている。食物繊維と非感染性疾
患との関連を検討した介入試験のメタ・アナリシスでは、高食物繊維摂取による収縮期血圧の 1.27
mmHg 低下が示された 79)。また、高血圧患者を対象とした介入試験のメタ・アナリシスでは、高食物
繊維摂取により血圧は低下し、5 g/日の食物繊維摂取量の増加で血圧 2.8/2.1 mmHg の低下が推定され
た 80)。
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