「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (265 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
カルシウム(calcium)は原子番号 20、元素記号 Ca、アルカリ土類金属の 1 つである。カルシウム
は、体重の 1~2%を占め、その 99%は骨及び歯に存在し、残りの約 1%は血液や組織液、細胞に含ま
れている。
1-2 機能
血液中のカルシウム濃度は、比較的狭い範囲(8.5~10.4 mg/dL)に保たれており、濃度が低下する
と、副甲状腺ホルモンの分泌が増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻る。したが
って、副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からのカルシウムの溶出が大きくなり、骨の粗鬆化
を引き起こすこととなる。骨は、吸収(骨からのカルシウムなどの溶出)と形成(骨へのカルシウム
などの沈着)を常に繰り返しており、成長期には骨形成が骨吸収を上回り、骨量は増加する。
1-3 消化、吸収、代謝
経口摂取されたカルシウムは、主に小腸上部で能動輸送により吸収されるが、その吸収率は比較的
低く、成人では 25~30%程度である。カルシウムの吸収は、年齢や妊娠・授乳、その他の食品成分な
ど様々な要因により影響を受ける。ビタミンDは、このカルシウム吸収を促進する。
吸収されたカルシウムは、骨への蓄積、腎臓を通しての尿中排泄の経路によって調節されている。
したがって、カルシウムの栄養状態を考える際には、摂取量、腸管からの吸収率、骨代謝(骨吸収と
骨形成のバランス)、尿中排泄などを考慮する必要がある。
2 指標設定の基本的な考え方
カルシウムの必要量の生体指標は、骨の健康維持の観点から考えることが重要である。また、カル
シウムの摂取と高血圧や肥満など生活習慣病との負の関連が報告されているが、カルシウム摂取によ
る予防効果は確立されているとは言えず 55–57)、現時点では、骨の健康維持以外の観点を基に生体指標
を定め、カルシウムの必要量を決めるのは尚早であると考えられる。
近年、カルシウムの体内蓄積量、尿中排泄量、吸収率など、要因加算法を用いて骨量を維持するた
めに必要な摂取量を推定するために、有用な報告がかなり集積されてきた。アメリカ・カナダの食事
摂取基準でも 2011 年の改定において、それまでの目安量から推定平均必要量、推奨量が示されてい
る 58)。ただし、アメリカ・カナダの食事摂取基準では、必要量の算出に出納試験の結果を用いている
が、日本人を対象とした出納試験は近年実施されておらず、今回もこれまでと同様に要因加算法を採
用し、骨量を維持するために必要な量として、推定平均必要量及び推奨量を設定した。
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