「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (62 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
1 エネルギー・栄養素
各論では、エネルギー及び栄養素について、食事摂取基準として設定した指標とその基準(数値)
及び策定方法を示す。
各論で使われている用語、指標等の基本的事項や本章で設定した各指標の数値の活用方法は、全て
総論で解説されているので、各論では説明しない。したがって、総論を十分に理解した上で各論を理
解し、活用することが重要である。
なお、各論で設定した各指標の基準は、全て性・年齢区分それぞれにおける参照体位を想定した値
である。参照体位と大きく異なる体位を持つ個人又は集団に用いる場合には注意を要する。また、栄
養素の量は、身体活動レベル(カテゴリー)が「ふつう」に該当する場合を想定した値である。この
身体活動レベルと大きく異なる身体活動レベルを持つ個人又は集団に用いる場合には、注意を要する。
1-1 エネルギー
1 基本的事項
生体が外界から摂取するエネルギーは、生命機能の維持や身体活動に利用され、その多くは最終的
に熱として身体から放出される。このため、エネルギー摂取量、消費量及び身体への蓄積量は、これ
と等しい熱量として表示される。国際単位系におけるエネルギーの単位はジュール(J)であるが、栄
養学ではカロリー(cal)が用いられることが多い。1 J は非常に小さい単位であるため、kJ(又は MJ)、
kcal を用いることが実際的であり、ここでは後者を用いる。kcal から kJ への換算は、国際連合食糧農
業機関・世界保健機関(FAO/WHO)合同特別専門委員会報告 1)に従い、1 kcal=4.184 kJ とした。
エネルギー摂取量は、食品に含まれる脂質、たんぱく質、炭水化物及びアルコールのそれぞれにつ
いて、エネルギー換算係数(各成分 1 g 当たりの利用エネルギー量)を用いて算定したものの和であ
る。一方、エネルギー消費量(総エネルギー消費量、total energy expenditure:TEE)は、基礎代謝、食
後の熱産生、身体活動の 3 つによるものと分類される。身体活動は、さらに、運動(体力向上を目的
に意図的に行うもの)、日常の生活活動、自発的活動(姿勢の保持や筋トーヌスの維持など)の 3 つ
に分けられる。
エネルギー収支バランスは、エネルギー摂取量-エネルギー消費量として定義される(図1)。成
人においては、その結果が体重と体組成の変化であり、エネルギー摂取量がエネルギー消費量を上回
る状態(正のエネルギー収支バランス)が続けば体重は増加し、逆に、エネルギー消費量がエネルギ
ー摂取量を上回る状態(負のエネルギー収支バランス)では体重が減少する。したがって、短期的な
エネルギー収支のアンバランスは、体重や体組成の変化で評価可能である。一方、エネルギー収支の
アンバランスは、長期的にはエネルギー摂取量、エネルギー消費量、体重が互いに連動して変化する
ことで調整される。例えば、長期にわたってエネルギー制限を続けると、体重減少に伴いエネルギー
消費量やエネルギー摂取量が変化し、体重減少は一定量で頭打ちとなり、エネルギー収支バランスが
ゼロになる新たな状態に移行する(図1)。多くの成人では、長期間にわたって体重・体組成は比較
的一定で、エネルギー収支バランスがほぼゼロに保たれた状態にある。肥満者もやせの者も、体重、
体組成に変化がなければ、エネルギー摂取量とエネルギー消費量は等しい。したがって、健康の保持・
52