「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (466 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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g/目標体重 kg/日のたんぱく質制限が提示されている(75 歳以上やサルコペニア・フレイルのリスク
がある症例は除く)60)。これも、「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」及び「エビデンスに
基づく CKD 診療ガイドライン 2023」に矛盾しない 1,6)。
一方で、糖尿病性腎症の症例においては、尿蛋白は減少するものの、たんぱく質制限による eGFR
低下の抑制効果は認められなかったとするメタ・アナリシス 34)や、尿蛋白の減少も腎機能低下抑制効
果も認めなかったとするもの 63)も報告されている。また、近年、使用が増加している SGLT2 阻害薬
とたんぱく質制限の関係の詳細も不明である。さらには、高齢者やサルコペニア、フレイルのリスク
を有する症例におけるその適応の詳細も明らかではない。今後も、これらの課題について詳細な検討
が必要である。
2-3-5 小児 CKD におけるたんぱく質制限
小児 CKD 患者では、たんぱく質制限の腎機能への効果や小児の特性(身体の成長、学校給食など
の集団生活)に与える影響についてのエビデンスが少ない。メタ・アナリシスでは、腎機能障害の進
行抑制、成長障害(身長、体重)ともに対照群と比較して有意差はないと結論している 64)。KDOQI は
ステージ G3 では標準体重におけるたんぱく質の摂取基準の 100~140%、ステージ G4 と G5 では 100
~120%の摂取を推奨しており 16)、早期 CKD におけるたんぱく制限は避けるべきである。「エビデン
スに基づく CKD 診療ガイドライン 2023」でも「小児 CKD ではたんぱく質摂取制限による腎機能障
害進行の抑制効果は明らかではなく、また成長障害を生じ得るため行わないことを提案する」とされ
ている 1)。
2-4 カリウム
腎機能が正常であれば、普段の食事からのカリウム摂取によって代謝異常(高カリウム血症)を起
こすことはない。CKD では、ステージが進むにつれ、腎臓からのカリウム排泄量が減少し、また代謝
性アシドーシスの合併によって高カリウム血症(血清カリウム値 5.5 mEq/L 以上)を起こす頻度が上
昇する。高度な高カリウム血症(血清カリウム値 7 mEq/L 以上)は、不整脈による突然死の原因にな
る可能性があり、極めて危険である。「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2023」では、血
清カリウム値(mEq/L)を 4.0 以上 5.5 未満にコントロールすることを提唱している 1)。これは、この
範囲外の群が総死亡と冠動脈疾患発症の複合エンドポイントを検討した臨床研究において、有意に危
険因子であったことによる 65)。また、我が国のデータベース研究では、血清カリウム値と死亡リスク
にはU字型の関係が認められ、血清カリウム値の適切なコントロールが必要であることが示された 66)。
血清カリウム値は、カリウム摂取量に大きな影響を受けるが、ほかにもミネラルコルチコイド、酸塩
基平衡、腎尿細管機能、ナトリウム排泄量などに影響を受ける 3)。また、CKD 患者は降圧薬や利尿薬
の処方を受けることが多いが、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系抑制薬は血清カリウム
値を上昇させ、利尿薬は血清カリウム値を低下させる作用がある 3)。
血清カリウム値が 5.5 mEq/L 以上の場合には、カリウムの摂取制限が必要となるが、その量は上記
の理由で個人差が大きく一概に決められない。危険がある場合には漠然とした制限をするのではなく、
頻繁に測定して血清カリウム値が 4.0~5.4 mEq/L の範囲になるように調節する 1)。
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