「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (256 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
3-3-1 主な生活習慣病との関連
高血圧の発症及び重症化は遺伝要因と環境要因(生活習慣)の相互作用から成り立っている。その
ため、高血圧の発症予防及び治療において生活習慣改善の意義は大きく、高血圧患者はもとより高血
圧の遺伝素因のある人や正常高値血圧者(120~129/80 mmHg 未満)などの高血圧予備群においては、
特に食事を含めた生活習慣の改善を図るべきである。
慢性腎臓病(CKD)に対しては、食塩の過剰摂取が高血圧を介して、CKD の発症及び重症化に関与
している可能性が示されている 17)。
また、食塩摂取とがん、特に胃がんの関係について多くの報告がある。世界がん研究基金・アメリ
カがん研究財団は、食事とがんに関する研究報告を詳細に評価した 18)。その結果、塩漬けの食品、食
塩は胃がんのリスクを増加させる可能性が高いとした。日本人を対象としたコホート研究では、食塩
摂取量が胃がん罹患率及び死亡率と正の関連を示すことが明らかにされ 19–21)、塩蔵食品の摂取頻度と
胃がんのリスクとの強い関連も示された 19)。日本人を対象とした研究も含むメタ・アナリシスでは 22)、
高食塩摂取は胃がんのリスクを高めると報告されており、別のメタ・アナリシスでも食塩摂取量が増
えるに従い、胃がんのリスクが高くなると報告されている 23)。
3-3-2 目標量の策定方法
・成人・高齢者(目標量)
2000 年以降の国民健康・栄養調査の経年変化を見ると、日本人の食塩摂取量は、日本人の食事摂取
基準(2020 年版)で設定した目標量には達していないものの、減少傾向にある(1 歳以上(男女計)
の 1 人 1 日当たりの食塩摂取量中央値は、2000 年 12.3g/日、2018 年 9.7g/日)。日本を始め各国の
ガイドライン 24–27)を考慮すると高血圧の予防、治療のためには、6 g/日未満の食塩摂取量が望ましい
と考えられることから、できるだけこの値に近づくことを目標とすべきであると考えられる。
一方、2012 年の WHO のガイドライン 3)が成人に対して強く推奨しているのは、食塩相当量として
5 g/日未満である。5 g/日は平成 30・令和元年国民健康・栄養調査における成人のナトリウム摂取量
(食塩相当量)の分布における下方 5 パーセンタイル値(男性が 4.7~5.5 g/日、女性が 3.8~4.5 g/日)
付近である。ナトリウム摂取量の個人内日間変動の大きさ(個人内変動係数は 34~36%であり、個人
間変動係数の 15~20%よりも数値として大きい 28))を考慮すれば、習慣的な摂取量として 5 g/日未満
を満たしている者は極めて稀であると推定される。したがって、目標量を 5 g/日未満とするのは、現
時点では実施可能性の観点から適切ではない。
ところで、24 時間尿中ナトリウム排泄量から食塩摂取量を推定する方法があり、海外の食事摂取基
準の策定には、24 時間尿中ナトリウム排泄量から推定した食塩摂取量を用いているケースも多い 29)。
我が国で 1953 年から 2014 年に行われた 53 本の研究論文のレビューによると、24 時間尿中ナトリウ
ム排泄量の平均値は、1950 年代では約 8,500 mg/日、2010 年代の研究では約 4,260 mg/日であったと報
告されている 30)。これらの尿中ナトリウム排泄量から単純に 2.54 倍して食塩相当量を推定すると、
1950 年代で約 21.6 g/日、2010 年代で約 10.8 g/日となる。さらに、尿中ナトリウム排泄量は摂取量の
86%であるという報告 31)を基に食塩摂取量を推定すると、それぞれ 25.1 g/日、12.6 g/日となる。その
後に我が国で行われている研究を含めても、特定の年齢階級を対象としたデータが多く、それらの値
にはばらつきがある 32)。
246