「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (207 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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値であるが、慢性摂取によるデータではないことから、不確実性因子を 5 として、成人のニコチンア
ミドの耐容上限量算定の参照値を 5 mg/kg 体重/日、ニコチン酸の耐容上限量算定の参照値を 1.25
mg/kg 体重/日とした。これらの値に各年齢区分の参照体重を乗じ、性別及び年齢区分ごとの耐容上限
量を算出し、平滑化を行った。
なお、ニコチン酸摂取による軽度の皮膚発赤作用は一過性のものであり、健康上悪影響を及ぼすも
のではないことから、耐容上限量を設定する指標には用いなかった。
・乳児(耐容上限量)
サプリメント等による摂取はないため、耐容上限量は設定しなかった。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、耐容上限量は設定しなかった。
3-3 生活習慣病の発症予防
ナイアシンの大量投与は脂質異常症の治療法として長く使われてきた。韓国の 3 つのコホート研究
のプール解析では、推奨量を上回る程度の範囲であっても、食事由来のナイアシン摂取量と脂質異常
症のリスクの間に負の関連が認められている 38)。しかし、脂質異常症予防を目的としたナイアシン摂
取量の決定にはさらなるエビデンスの蓄積が必要である。また、糖尿病の発症のリスクには関連がな
いという研究も存在する 39)。以上より、生活習慣病の発症予防を目的とした具体的な数値を算出する
上で十分な情報を得られていないと判断し、目標量は設定しなかった。
4 生活習慣病の重症化予防
2 型糖尿病や循環器疾患の患者を対象としてナイアシン補給が当該疾患に与える効果を検証した介
入研究はいくつか存在するが、それらにおけるナイアシン摂取量は通常の食品から摂取できる範囲を
超えているものが多く、かつ、結果は十分に一致していない 40–44)。一方、糖尿病患者を対象とした前
向きコホート研究では食事由来のナイアシン摂取量と総死亡率に負の関連を認めたものの、サプリメ
ント由来のナイアシン摂取量では関連は認められなかった 45)。以上より、ナイアシン摂取と生活習慣
病の重症化予防の直接的な関連を示す報告はないと判断し、生活習慣病の重症化予防を目的とした量
は設定しなかった。
5 活用に当たっての留意事項
ナイアシンの推定平均必要量はペラグラ発症という欠乏を回避するための最小摂取量であり、これ
を下回る日々が数週間続くと欠乏となる。ビタミン体としてのナイアシンよりも、前駆体であるトリ
プトファンの欠乏がペラグラ発症のリスクにより影響を与える 46)。体内の要求量は、エネルギー消費
量の増大に伴って増える。
ナイアシンは不可欠アミノ酸のトリプトファンから生合成されるので、トリプトファンの摂取量も
考慮する必要がある。トリプトファンの推定平均必要量は成人で 6 mg/g たんぱく質であるが、ナイア
シン栄養を良好に維持するには 12 mg/g たんぱく質の摂取が望ましい。
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