「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (277 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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整済み中央値は 854 mg/日である。一方、上述のように、妊娠可能な年齢における非妊娠女性の目安
量は 800 mg/日と算定されており、妊娠によって必要量が異なることを示唆する報告は特にない。こ
れらを考慮し、目安量を 800 mg/日とした。
・授乳婦(目安量)
授乳婦の血清リン濃度は、母乳への損失があるにもかかわらず高値であり 148)、授乳婦ではリンの
骨吸収量の増加と尿中排泄量の減少が観察されている 147)ことから、非授乳時の摂取量に加えてリン
を摂取する必要はないと判断できる。平成 30・令和元年国民健康・栄養調査では、非妊娠時、非授乳
時の女性のリン摂取量の年齢区分調整済み中央値は 854 mg/日である。一方、上述のように、授乳可
能な年齢における非授乳婦の目安量は 800 mg/日と算定されている。これらを考慮し、授乳婦の目安
量を 800 mg/日とした。
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取状況
リンは、様々な食品に含まれている。加工食品などでは食品添加物としてのリンが使用されている
が、摂取量に対する食品添加物等の寄与率は不明である。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
腎機能が正常なときは、多量のリンを摂取すると PTH 及び FGF23 の分泌が亢進して腎臓からのリ
ン排泄を促進し、血中のリン濃度を正常範囲に維持するように働く 147)。このため、リンを過剰摂取
した場合も、早朝空腹時の血清リン濃度は基準範囲に保たれており、リン摂取過剰状態の適切な指標
とはならない。一方、食後の血清リン濃度、尿中リン排泄量、PTH や FGF23 が耐容上限量の設定に
有効な指標となり得る可能性がある。
リン摂取量と PTH との関係は、古くより研究されてきている 148,156–164)。食品添加物としてリンを
多量に摂取した場合、総摂取量が 2,100 mg/日を超えると副甲状腺機能の亢進を来すという報告があ
る 156)。また、1,500~2,500 mg/日の無機リン(リン酸)157,158)あるいは 400~800 mg/食の無機リン 159)
を食事に添加することにより、食後の PTH レベルが上昇することも知られている。リンの過剰摂取
は、腸管におけるカルシウムの吸収を抑制するとともに、食後の急激な血清無機リン濃度の上昇によ
り、血清カルシウムイオンの減少を引き起こし、血清副甲状腺ホルモン濃度を上昇させる 148)。しか
し、これらの反応が骨密度の低下につながるか否かについては、否定的な報告もある 160)。一方、カル
シウムの摂取量が少ない場合には、リンの摂取は用量依存的に成人女性の血中の PTH 濃度を上昇さ
せ、骨吸収マーカー(I 型コラーゲン架橋 N- テロペプチド)を上昇、骨形成マーカー(骨型アルカリ
ホスファターゼ)を低下させるという報告がある 161)。したがって、リンとカルシウムの摂取量の比
も考慮する必要があると考えられる。
しかし、現在のところ、高リン摂取又は低カルシウム/リン比の食事摂取と骨減少の関連について、
ヒトでの研究は十分ではない。そのため、PTH レベルの上昇を指標として耐容上限量を算定するのは、
少なくとも現段階では困難であると考えられる。
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