「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (171 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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乳児(13 人)に対して出生後 6 日間にわたって 34.5~54.3 µg/日(平均 44 µg/日)を摂取させ、そ
の後 6 か月間における成長を観察した結果、成長の遅れは観察されなかったと報告されている 75)。ア
メリカ・カナダの食事摂取基準 41)では、この結果を基に、44 µg/日を健康障害非発現量と考えている。
そして、研究数が 1 つであること、追跡期間が短いこと、対象児数が少ないことを理由に不確実性因
子を 1.8 とし、24.4 µg/日(丸め処理を行って 25 µg/日)を耐容上限量としている。なお、EFSA にお
いて、高カルシウム尿症、高カルシウム血症、腎石灰沈着症、発育パターン異常に関する臨床試験や
観察研究から得られたエビデンスから、乳幼児の耐容上限量を設定する試みもあるが、十分なエビデ
ンスは得られておらず、これまでの報告に基づき設定されている 76)。また、6~11 か月児に耐容上限
量を独自に算定するためのデータもないことから、食事摂取基準においては、0~5 か月、6~11 か月
共に 25 µg/日を耐容上限量とした。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
妊婦に対して、100 µg/日までの介入を行った研究において、高カルシウム血症を含む健康障害を認
めなかったと報告されている 77)。また特に、妊婦・授乳婦に高カルシウム血症発症リスクが高いとい
う報告がないことから 74)、妊婦・授乳婦の耐容上限量について、独自の値を設定しないこととした。
3-3 生活習慣病の発症予防
近年ビタミンDに関しては、骨関連のみならず、心血管系・免疫系などに対して、種々の作用が報
告されているが 39,40,43)、その多くが血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度との関連を報告しており、摂
取量に言及した論文は限定されている。諸外国の食事摂取基準では、唯一、骨折リスクのみが血中 25ヒドロキシビタミンD濃度と用量反応関係を示すとされている 39,41)。骨折リスクの低下が観察される
血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度には研究によってばらつきがあるが、20 ng/mL が閾値とされてお
り、我が国のコホート研究の結果もおおむねこれに一致している 56,78)。ただし、それ以上の血中濃度
を維持する意義は明確でない 39–41)。
血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度低値がフレイルのリスクとなることが示されているが 79,80)、リ
スク低下の閾値は明確ではない。また、血中 25-ヒドロキビタミンD濃度低値は転倒リスクとなるこ
とも示されており 39–41)、日本人高齢者を対象としたコホート研究でも同様の結論が得られている 81)。
ただし、転倒リスクが低下する血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度の閾値は明確ではなく、また、転
倒予防へのビタミンDの有効性は、高用量のビタミンD補給でも乏しいことが示されている 82)。
以上より、いずれの疾患リスクに対しても、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が 20 ng/mL を上回
ることが望ましいと考えられるが、その血中濃度を達成するために必要な摂取量を設定できるだけの
科学的根拠は不十分である。しかしながら、食事からの適切なビタミンDの摂取と日常生活における
適度な日光浴(日光曝露)を心掛けることが望まれる。
4 生活習慣病の重症化予防
既に骨粗鬆症を有する例において、ビタミンD不足は、負のカルシウムバランスから、二次性副甲
状腺機能亢進症を起こし、骨折リスクを増加させる 83)。しかし、重症化予防を目的とした量を設定で
きるだけの科学的根拠は乏しいことから、設定を見送った。
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