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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (399 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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シグナルの活性化を介して、たんぱく質合成を誘導する 20)。食後(たんぱく質摂取後)に誘導される
筋たんぱく質合成の反応性の低下を同化抵抗性(anabolic resistance)と呼び、これは高齢期の骨格筋
量の減少やサルコペニアの一因と考えられている 21,22)。同化抵抗性を来す機序は複合的である。たん
ぱく質の合成誘導に必要なたんぱく質摂取量には閾値があり、同化抵抗性が存在する場合には、それ
が存在しない場合よりも多くのたんぱく質を摂取しないと同化が誘導されず 23,24)、このことが、高齢
期のたんぱく質不足を回避すべきであるという考えにつながる。
運動もまた合成誘導する因子である。運動により筋たんぱく質は分解されるが、運動は mTORC1 を
介する経路などにより、合成も誘導する。アミノ酸が十分に供給されない状況下での運動は、合成以
上に異化が進むことで、正味のたんぱく質量が減少し得る。したがって、アミノ酸摂取と運動(特に
レジスタンス運動)を組み合わせることが、筋たんぱく質の維持と増強に重要である 25,26)。

1-3 高齢者における栄養と健康
1-3-1 高齢者の栄養管理上の問題点
栄養評価に絶対的な評価法はないが、栄養状態の評価としては身体計測が代表的である 27)。体格
(Body Mass Index:BMI)は、栄養の評価指標として種々の評価法の中に組み込まれている。しかし、
高齢者の身長や体重の測定には注意が必要である。身長の測定には、亀背などの影響による過小評価
や、立位を保持できない場合に立位以外で測定した値の正確さへの懸念などの問題がある。また、体
重についても、日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)の低下した高齢者では、特別な測定機
器がなければ、測定が困難である。
身長が短縮して測定された場合、BMI 値は見かけ上、増加してしまう 28)。また、BMI は体重から算
出され、脂肪組織量と徐脂肪組織量の影響を受けるが 29)、体組成を直接に反映する指標ではないこと
にも留意を要する。さらに、心不全や腎不全などにより浮腫を伴う場合の値の解釈も難しい。
したがって、高齢者の栄養状態の指標として BMI を単独で使用する際の有効性には限界があり、
様々な評価方法を併用することがある。主観的包括的評価(Subjective Global Assessment:SGA)、MNA®
(Mini-Nutritional Assessment)、MNA®-SF(Mini-Nutritional Assessment Short Form)、MUST(Malnutritional
Universal Screening Tool)などが用いられている。過栄養を反映する肥満では、診断のための BMI の
カットオフ値は、高齢者も成人一般と同様の基準が用いられている 30)。

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