「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (431 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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を飽和脂肪酸の炭素数別に検討したメタ・アナリシスによると、ラウリン酸(炭素数が 12)、ミリス
チン酸(同じく 14)及びパルミチン酸(同じく 16)では有意な上昇がみられたが、ステアリン酸(同
じく 18)では有意な変化はみられなかった 12)。このように、飽和脂肪酸の中でも炭素数の違いによっ
て血清コレステロールへの影響が異なることが指摘されている。植物由来でもココナッツオイルなど
では、ラウリン酸やミリスチン酸を多く含むため、摂取量には注意する必要がある。
飽和脂肪酸摂取量 (g/日)
コレステロール摂取量 (mg/日)
5
10
15
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
20
0
血清総コレステロールの期待変化量 (mg/dL)
血清総コレステロールの期待変化量 (mg/dL)
0
100
200
300
400
-1
-2
-3
-4
-5
-6
-7
図2 飽和脂肪酸・多価不飽和脂肪酸及びコレステロールの摂取量を変えたときの
血清総コレステロール濃度の期待変化量(Keys の式による)
仮定:エネルギー摂取量=1,915 kcal/日、飽和脂肪酸摂取量=17.86 g/日、多価不飽和脂肪酸(n-6 系脂肪酸と n-3 系脂肪酸の和)
摂取量=13.12 g/日、コレステロール摂取量=340 mg/日(全て、令和元年国民健康・栄養調査における 20 歳以上成人の平均
値(男女合計))から摂取量を変化させた場合とした。
左図:飽和脂肪酸摂取量を減らし、同時に、同量の多価不飽和脂肪酸を増やした場合。総エネルギー摂取量は不変。コレステロー
ル摂取量も不変。横軸は飽和脂肪酸摂取量で示してある。
右図:コレステロール摂取量を減らした場合。総エネルギー摂取量は不変。飽和脂肪酸摂取量、多価不飽和脂肪酸摂取量ともに不
変。
2-1-3 多価不飽和脂肪酸
飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えることで心血管疾患の減少が認められており 10)、前述の
メタ・アナリシスによれば、総エネルギー摂取量の 5%を炭水化物から多価不飽和脂肪酸に置き換え
ると平均として 2.8 mg/dL の血清 LDL-コレステロールの減少が観察されている 11)。さらに、研究数
を増やした別のメタ・アナリシスでも、ほぼ同様の結果が得られている 12)。多価不飽和脂肪酸は、そ
の構造や代謝経路の違いによって、n-6 系脂肪酸と n-3 系脂肪酸に分かれる。
2-1-4 n-6 系脂肪酸
飽和脂肪酸を n-6 系脂肪酸に置き換えることで、総コレステロール、LDL-コレステロールが低下す
ることが報告されている 10,11,22)。適正なエネルギー摂取量のもとで n-6 系脂肪酸の摂取量を増やすこ
とで、血清脂質の改善が期待できる。一方、n-6 系脂肪酸の動脈硬化性疾患の発症予防効果に関して
は、好ましいとするメタ・アナリシス 23)と否定的なメタ・アナリシス 24)があり、摂取量を増やすこと
による効果は明らかではないが、飽和脂肪酸をリノール酸に置き換えることは動脈硬化性疾患の発症
について予防的に働く可能性がある 23,25)。
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