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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (336 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦及び授乳婦に特別な耐容上限量は設定しなかった。

3-3 生活習慣病等の発症予防
3 価クロムのサプリメントと糖代謝の関連を検討した 41 の疫学研究を、対象者を2型糖尿病患者、
耐糖能低下者、耐糖能非低下者に分けて比較したメタ・アナリシスは、糖尿病患者へのクロムサプリ
メント投与は血糖値と HbA1c 値の改善をもたらす場合が多いが、非糖尿病の人への投与は、耐糖能
低下がある場合を含めて、血糖値と HbA1c 値に何ら影響を与えないとしている 226)。ここで検討の対
象となった疫学研究で用いられているクロムは、塩化クロム、ピコリン酸クロム、クロム酵母であり、
糖尿病患者に対して効果のあった投与量は、塩化クロムとピコリン酸クロムが 200~1,000 µg/日、ク
ロム酵母が 10~400 µg/日である。一方、肥満の非糖尿病者へのクロムサプリメント(500 µg/日、ピコ
リン酸クロム)の効果を調べた無作為化比較試験は、クロムのメタボリックシンドロームに対する効
果を認めていない 227)。さらに、耐糖能低下、空腹時血糖値の上昇、メタボリックシンドロームのいず
れかの状態にあって、糖尿病発症リスクが高いと考えられる人にクロム(ピコリン酸クロム)を 500
又は 1,000 µg/日を投与した研究でも、クロムの効果を全く認めていない 228)。以上の報告は、3 価クロ
ム投与が糖尿病やメタボリックシンドロームの発症予防に効果がないことを示している。したがって、
生活習慣病の発症予防のための目標量(下限値)を設定する必要はないと判断した。

4 生活習慣病等の重症化予防
上で述べたように、3 価クロムは糖尿病患者に対して薬理的効果を示す可能性がある。しかし、糖
尿病患者に対するクロム補給に関する最近のメタ・アナリシスでは、200~1,000 µg/日のクロム補給の
効果は HbA1c 値の改善のみであるとしている 229)。このように糖尿病患者へのクロム補給の効果が限
定的であること、補給されているクロム量が耐容上限量を上回る場合もあることから、重症化予防の
ための目標量(下限値)も設定すべきではないと判断した。

5 活用に当たっての留意事項
クロムサプリメントの利用は勧められない。

6 今後の課題
クロムを必須栄養素としない考え方について詳細に検討し、摂取基準の対象とすべきかの判断を慎
重に進める必要がある。日本人のクロム摂取量の推定に必要な食品のクロム含有量についてのデータ
を蓄積する必要がある。

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