「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (432 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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通常の食品から摂取する主な n-3 脂肪酸は、α-リノレン酸と魚類由来長鎖 n-3 系脂肪酸(主として
eicosapentaenoic acid(EPA)及び docosahexaenoic acid(DHA))である。
魚類由来長鎖 n-3 系脂肪酸(EPA 又は DHA)をサプリメントとして負荷して、血清脂質の変化を
観察した 47 の介入試験[解析に用いられた対象者数(研究数)は、総コレステロールが 16,511 人(46)、
LDL-コレステロールが 14,009 人(39)、HDL-コレステロールが 15,106 人(43)、トリグリセライド
が 15,492 人(47)、平均年齢は 49 歳、介入期間は平均 24 週間(範囲は 4~260 週間)]をまとめた
メタ・アナリシス(インドで行われた 2 つの研究を除いて全て欧米諸国で行われた研究、脂質異常症
で糖尿病や心筋梗塞の既往など心血管系疾患リスクを有する成人男女を対象)では、LDL-コレステロ
ールの有意な上昇が示されている 26)。
しかし、この研究における摂取量の平均値は 3.25 g/日と、通常の食品からの摂取量としてはかなり
多く、一方で、LDL-コレステロールの上昇は平均 2.3 mg/dL と小さい。糖尿病患者を対象とした類似
の研究をまとめたメタ・アナリシスでも、ほぼ類似の結果が報告されている 27)。健康な成人及び脂質
異常症患者における無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、魚油の摂取量の増加によるトリグリ
セライドの低下効果 26–30)、また、無作為化比較試験では食後トリグリセライド上昇に対する抑制効果
が得られている 31)。
α-リノレン酸をサプリメントとして負荷して血清脂質の変化を観察した 17 の介入試験をまとめた
メタ・アナリシスでは、HDL-コレステロールが有意に低下したが、LDL-コレステロールには有意な
変化は認められなかった 32)。しかし、この研究では摂取量は報告されていない。
魚油製剤(カプセルなど)を用いた無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、高用量又は低用量
による n-3 系脂肪酸の摂取によって、総死亡リスクの抑制は認められず 28,33,34)、心血管疾患死亡、心
血管疾患発症、冠動脈疾患発症リスクへの影響については結論が一致していない 28,33–36)。冠動脈疾患
発症リスクを有意に抑制した報告でも 5~9%の低下であった 28,36)。しかし、高トリグリセライド血症
あるいは高 LDL-コレステロール血症を有する高リスク群では有意に冠動脈疾患発症の抑制効果を認
めている 37)。
欧米のコホート研究においては心血管疾患発症に対する魚油の有効性は一定していないが、我が国
のコホート研究では冠動脈疾患の発症が少なく、心血管死亡率も少なかった 38–40)。したがって、冠動
脈疾患発症の抑制が期待できる。
2-1-6 食事性コレステロール
前述の Keys の式 7)及び Hegsted の式 8)によれば、食事性コレステロールの摂取によって血清総コレ
ステロールが上昇することが示されている。しかし、食事性コレステロールと血清総コレステロール
又は LDL-コレステロールとの間に強い関連が観察されるのは、コレステロール摂取量がある一定の
範囲にある場合に限定されており、あまり明確ではないものの、およそ 100~350 mg/日の範囲で両者
は強い関連を示しており、それ未満でもそれ以上でも両者の関連は明確でないとしている 41)。別の報
告では、コレステロール摂取量が 400 mg/日までの範囲では、コレステロール摂取量と血清総コレス
テロールの関連はほぼ直線的であるとしている 8)。また、Keys の式では、コレステロール摂取量の平
方根の変化量が血清総コレステロールの変化量に比例するとしているが、図2に示したとおり、現実
的な摂取量の変化の範囲ではほぼ直線的に変化すると考えても大きな支障はないであろう。
コレステロールは、全身の細胞で作られ血清のコレステロールは肝臓の合成量とリポたんぱく質の
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