「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (313 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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日)を亜鉛の最低健康障害発現量と考え、アメリカ・カナダの 19~30 歳女性の参照体重(61 kg)と
不確実性因子 1.5 で除した 0.66 mg/kg 体重/日に、性別及び年齢区分ごとの参照体重を乗じて耐容上限
量を算定した。
・小児・乳児(耐容上限量)
十分な報告がないため、小児及び乳児の耐容上限量は設定しなかった。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦及び授乳婦に特別な耐容上限量は設定しなかった。
3-3 生活習慣病等の発症予防
亜鉛摂取量又は血清亜鉛濃度を指標にして対象者を分割し、糖尿病又は心血管疾患の発症リスクを
比較している多数のコホート研究をレビューした報告では、高亜鉛状態が心血管疾患発症リスクを低
下させるのは、糖尿病を有するか、心血管造影において高リスクと診断されている集団のみであり、
一般には亜鉛状態とこれらの疾患の発症リスクとの関連は明確でないとしている 88)。また、亜鉛摂取
量又は血清亜鉛濃度によって定義される亜鉛状態と糖尿病発症リスクとの関連を調べた研究のレビ
ューでは、亜鉛摂取量の増加は、糖尿病発症リスクを低下させるが、発症リスクが高いのは、亜鉛の
必要量が充足されていない場合であり、必要量を超える亜鉛摂取が糖尿病の発症リスクを低下させる
ことの明確なエビデンスは存在しないと結論している 88,89)。一方、亜鉛サプリメント投与と血清脂質
との関連についてのメタ・アナリシスでは、亜鉛サプリメント投与が健康な人の血清総コレステロー
ル、LDL-コレステロール、中性脂肪を有意に減少させるとしている 90)。しかし、このメタ・アナリシ
スの対象となった研究では、亜鉛サプリメントの投与量が 15~240 mg/日の範囲であり、耐容上限量
を上回る投与量も散見される。さらに、高血圧患者において血清亜鉛濃度が高血圧のない者よりも有
意に低いという報告があるが、亜鉛摂取による発症予防効果は明らかではない 91)。
以上より、亜鉛摂取と生活習慣病予防との関連については定量的なデータが不足しており、目標量
(下限値)は設定しなかった。
4 生活習慣病等の重症化予防
糖尿病又は糖・脂質代謝異常者に対する亜鉛サプリメント投与効果を検討したメタ・アナリシスが
複数存在する 92–96)。これらの報告では、亜鉛サプリメント投与が糖尿病患者らの血清生化学検査値を
改善させるとしている。レビューの対象となった研究での亜鉛の投与量はほとんどが 30 mg/日以上で
あり、耐容上限量を上回る投与量も散見されるが、低容量(20〜25 mg/日)の亜鉛を 12 週間以上投与
した場合に検査値の改善が認められる場合が多いとする報告もある 96)。しかし、日本人の成人に 20
〜25 mg/日の亜鉛補給を行うと亜鉛の総摂取量は約 30 mg/日に達し、耐容上限量に近接する。亜鉛の
過剰摂取が糖尿病発症リスクを高める可能性及び血清亜鉛濃度と糖尿病発症リスクに正の相関のあ
るという報告もあることから 88,89)、糖尿病や糖代謝異常の悪化防止や改善のために、亜鉛摂取量を 30
mg/日以上に増やすことには慎重でなければならない。
CKD から維持血液透析となった患者を対象に、栄養状態、脂質プロファイル、抗酸化療法及び抗炎
症療法に対する亜鉛補給の効果を調べた研究のメタ・アナリシスでは、亜鉛サプリメント投与により
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