「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (276 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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また、過剰摂取の回避のために耐容上限量を設定した。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
アメリカ・カナダの食事摂取基準では、血清リン濃度の正常下限値を維持できるリン摂取量を推定
平均必要量として求め、その値から推奨量を算出している 153)。そこで、血清リン濃度を基準範囲に
維持できる摂取量、及び成長に伴う蓄積量から必要量の検討を試みたが、日本人に関する報告はほと
んど見当たらなかった。したがって、推定平均必要量と推奨量は設定せず、目安量を設定することと
した。
3-1-2 目安量の策定方法
・成人・高齢者・小児(目安量)
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査によると、リンの摂取量の中央値は 957 mg/日である。ただ
し、前述の通り、この値には加工食品に添加されているリンの量は加味されていないために、実際の
摂取量はこの値より多いことも考えられる。18~28 歳の日本人女性を対象とした出納試験によると、
リンの平衡維持に必要な摂取量は、18.7 mg/kg 体重/日 120)であった。この値を基に、性別及び年齢区
分ごとの参照体重を乗じて推定平均必要量を求めると、18~29 歳の女性では 946 mg/日となり、ほぼ
現在の摂取量に近い値となる。年齢(平均±標準偏差)が 68 ± 6 歳の高齢女性を対象に陰膳法によっ
て実測を行った結果 154)では、リン摂取量(平均±標準偏差)は 1,019 ± 267 mg/日と報告されており 154)、
国民健康・栄養調査とほぼ同程度の値である。
以上から、1歳以上については、平成 30・令和元年国民健康・栄養調査結果の中央値を用いて目安
量を策定した。ただし、18 歳以上については、実際の摂取量は食品添加物からのリン摂取量が加わる
可能性を考慮して、男女別に各年齢区分の摂取量の中央値の中で最も少ない摂取量をもって、それぞ
れの 18 歳以上全体の目安量とした。
・乳児(目安量)
日本人の母乳中リン濃度の平均値は 150 mg/L であると報告されており 10,11)、この値に基準哺乳量
(0.78 L/日)12,13)を乗じて得られる 117 mg/日に丸め処理を行って、120 mg/日を 0~5 か月児の目安量
とした。6~11 か月児について、母乳中のリン濃度と 6~11 か月の哺乳量(0.53 L/日)14,15)から計算さ
れる母乳由来のリン摂取量(80 mg/日)と、離乳食由来のリン摂取量(183mg/日)16)を足し合わせ、
丸め処理を行って 260 mg/日を目安量とした。
・妊婦(目安量)
出生時の新生児の総リン量は 17.1g との報告がある 155)。これを非妊娠時の摂取に加えて摂取すべ
き量と考えると 1 日当たり約 68 mg となる。妊娠時のリンの吸収率は 70%、非妊娠時は 60~65%との
報告がある 153)。そこで、18~29 歳の目安量(800 mg/日)に吸収率(70%、60%)を乗じると、リン
吸収量はそれぞれ 560 mg/日、480 mg/日となる。この差(80 mg/日)は上記の 68 mg/日を上回ってい
るため、非妊娠時の摂取量に加えてリンを多く摂取する必要はないと判断できる。
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