よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (273 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 耐容上限量の策定
食品以外からのマグネシウムの過剰摂取によって起こる初期の好ましくない影響は、下痢である。
多くの人では何も起こらないようなマグネシウム摂取量であっても、軽度の一過性下痢が起こること
がある。それゆえ、下痢の発症の有無がマグネシウムの耐容上限量を決めるための最も確かな指標に
なると考えられる。下痢の発症を臨床アウトカムとすると、欧米諸国からの報告に基づき、成人にお
けるサプリメント等からのマグネシウム摂取による最低健康障害発現量を 360 mg/日とするのが適当
と考えられる 129–132)。ただし、日本人における報告はない。マグネシウムの過剰摂取によって生じる
下痢が穏やかなものであり、可逆的であることを考えると、不確実性因子は例外的に 1 に近い値にし
ても良いと考えられる。アメリカ・カナダの食事摂取基準でも同様の考え方を採用して、最低健康障
害発現量を 360 mg/日(体重換算すると 5 mg/kg 体重/日)とした上で、不確実性因子をほぼ 1 として、
成人並びに小児(ただし、8 歳以上)について、耐容上限量を 350 mg/日としている 116)。この考え方
を採用し、サプリメント等、通常の食品以外からの摂取量の耐容上限量を、成人の場合 350 mg/日、
小児では 5 mg/kg 体重/日とした。なお、サプリメント以外の通常の食品からのマグネシウムの過剰摂
取によって好ましくない健康影響が発生したとする報告は見当たらないため、通常の食品からの摂取
量の耐容上限量は設定しなかった。

3-3 生活習慣病の発症予防
3-3-1 主な生活習慣病との関連
・高血圧
55 歳以上の高齢者を対象としたオランダの研究では、100 mg/日のマグネシウム摂取量増加は収縮
期/拡張期血圧の 1.2/1.1 mmHg の有意の降圧を伴うことが示されている 133)。介入試験のメタ・アナリ
シス 134)では、平均 410 mg/日のマグネシウム補給で収縮期/拡張期血圧が -0.32/-0.36 mmHg と、僅か
だが有意に低下したと報告されている。しかし、降圧効果を示さなかったレビュー135,136)もある。105
の介入試験をまとめたレビュー136)では、マグネシウムの介入試験には質に問題のあるものが少なくな
いとも述べられている。
2016 年のメタ・アナリシス 137)、2017 年のメタ・アナリシス 138)は、いずれもマグネシウムの補給
により血圧が低下することを示している。マグネシウムの補給量は 240~960 mg、365~450 mg であ
った。2021 年のレビューでは、食事からのマグネシウムの平均的な摂取量は推奨される値を下回って
おり、高血圧の予防と治療におけるマグネシウムの補給は正当化される可能性があるとしている 139)。
しかしながら、サプリメント等の摂取によるマグネシウムの降圧作用については、科学的根拠が十
分ではなく、耐容上限量との関係もあるため、サプリメント等によるマグネシウムの摂取は推奨でき
ない。
・糖尿病
マグネシウム摂取量と 2 型糖尿病との関連について検討した 13 の前向きコホート研究のメタ・ア
ナリシスでは、マグネシウムの摂取量と 2 型糖尿病の罹患リスクは負の相関を示し、100 mg/日のマグ
ネシウム摂取量増加は、相対リスクを 0.86 に低下させた 140)。
2016 年に発表された同様の解析でも、100 mg/日のマグネシウム摂取量増加により、2 型糖尿病の発
症を 8~13%減少させると報告されている 141)。
263