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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (128 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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7-1-3-2 目標量の策定
必須脂肪酸でなく、同時に、主な生活習慣病への量的影響も明らかではないため、目標量は策定し
なかった。

7-2 トランス脂肪酸
7-2-1 基本的事項
トランス脂肪酸(トランス型脂肪酸)は不飽和脂肪酸であり、1 つ以上の不飽和結合がトランス型
である脂肪酸である(注:自然界に存在する脂肪酸に含まれる不飽和結合のほとんどはシス型結合で
ある)。工業的に水素添加を行い、不飽和脂肪酸(液状油)を飽和脂肪酸(固形油)に変えるときに
副産物として生じる。つまり、これらのトランス脂肪酸は工業由来のものである。また、反芻動物の
胃で微生物により生成され、乳製品、肉の中に含まれる脂肪酸の中にもトランス脂肪酸が存在する。
我々が摂取するトランス脂肪酸は、この 2 つに大別される。
7-2-2 摂取状況
食品安全委員会は「食品に含まれるトランス脂肪酸」(報告書)で、国民健康・栄養調査(平成 15
~19 年)のデータを解析し、全対象者における平均値、中央値ともに 0.3%エネルギーと報告してい
る 51)。
7-2-3 健康の保持・増進
7-2-3-1 生活習慣病の発症予防
トランス脂肪酸は、飽和脂肪酸よりも LDL-コレステロール/HDL-コレステロール比を大きく上昇
させることが、介入試験をまとめたメタ・アナリシスで示されている 52)。コホート研究をまとめたメ
タ・アナリシスでは、工業由来トランス脂肪酸の最大摂取群は最小摂取群に比較して冠動脈疾患発症
の相対危険が 1.3 倍であったと報告されている 53)。トランス脂肪酸摂取に関する類似の結果は、その
後の類似のメタ・アナリシスでも報告されている 15)。
トランス脂肪酸摂取が数週間以内の血糖変化に与える影響を観察した介入試験をまとめたメタ・ア
ナリシスでは、トランス脂肪酸摂取は血糖変化に有意な変化を与えなかったと報告している 54)。また、
コホート研究をまとめたメタ・アナリシスでも、糖尿病発症率との間に有意な関連を観察していな
い 15)。
なお、トランス脂肪酸は工業由来のものと、反芻動物の胃で微生物により生成され、乳製品、肉の
中に含まれているものに大別されるが、現在までのところ由来の違いによる影響を区別するには十分
なエビデンスが得られていない 20)。
日本人のトランス脂肪酸摂取量(欧米に比較して少ない摂取量)の範囲で疾病罹患のリスクになる
かどうかは明らかでない。しかし、日本人の研究においてトランス脂肪酸の一種であるエライジン酸
の血中濃度が認知症発症との関連を認めている 55)。欧米での研究では、トランス脂肪酸摂取量は、冠
動脈疾患 56)、血中 CRP(C反応性たんぱく質)値 57)と用量依存性に正の関連が示され、閾値は示され
ていない。また、日本人の中にも欧米人のトランス脂肪酸摂取量に近い人もいる 58)。なお、工業的に
生産されるトランス脂肪酸の人体での有用性は知られていない。

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