「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (82 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
妊婦の推定エネルギー必要量は、
推定エネルギー必要量(kcal/日)=妊娠前の推定エネルギー必要量(kcal/日)
+妊婦のエネルギー付加量(kcal/日)
として求められる。
女性の妊娠(可能)年齢が、推定エネルギー必要量の複数の年齢区分にあることを鑑み、妊婦が妊
娠中に適切な栄養状態を維持し正常な分娩をするために、妊娠前と比べて追加的に摂取すべきと考え
られるエネルギー量を、妊娠期別に付加量として示す必要がある。
二重標識水法を用いた縦断的研究によると、妊娠中は身体活動レベルが妊娠初期と後期に減少する
が、基礎代謝量は逆に、妊娠による体重増加により後期に大きく増加する 77,81–85)。結果、エネルギー
消費量の増加率は妊娠初期、中期、後期とも、妊婦の体重の増加率とほぼ一致しており、全妊娠期に
おいて体重当たりのエネルギー消費量は、ほとんど差がない。したがって、妊娠前のエネルギー消費
量(推定エネルギー必要量)に対する妊娠による各時期のエネルギー消費量の変化分 76,78)は、妊婦の
最終体重増加量 11 kg86)に対応するように補正すると、初期:+19 kcal/日、中期:+77 kcal/日、後期:
+285 kcal/日と計算される。
また、妊娠期別のたんぱく質及び体脂肪の蓄積量から、最終的な体重増加量が 11 kg に対応するよ
うにたんぱく質及び体脂肪としてのエネルギー蓄積量をそれぞれ推定し、それらの和としてエネルギ
ー蓄積量を求めた。その結果、各妊娠期におけるエネルギー蓄積量は初期:44 kcal/日、中期:167 kcal/
日、後期:170 kcal/日となる。
したがって、最終的に各妊娠期におけるエネルギー付加量は、
妊婦のエネルギー付加量(kcal/日)=妊娠による消費エネルギーの変化量(kcal/日)
+エネルギー蓄積量(kcal/日)
として求められ、50 kcal 単位で丸め処理を行うと、初期:50 kcal/日、中期:250 kcal/日、後期:450
kcal/日と計算される。
ところで、体重増加に必要なエネルギー量は理論的には身体活動レベルによって異なる 82)。しかし、
妊娠中の身体活動レベルの増減はそれぞれの研究で必ずしも一致せず 81–84)、身体活動レベル別に付加
量の具体的な値を示すことは難しい。
さらに、妊娠中の望ましい体重増加量は妊娠前の体格(BMI)に大きく関連する 87)。日本産科婦人
科学会、及び日本産科婦人科医会が作成した「産婦人科診療ガイドライン―産科編 2023」では妊娠前
の BMI 別に妊娠中の体重増加指導の目安が設定されている 88)。アメリカ・カナダの食事摂取基準で
も妊娠前 BMI 別の体重増加推奨値に応じて付加量を設定している 89)。しかしながら、日本人妊婦に
おいて同様の考え方で付加量を設定するにはまだ十分なデータがそろっておらず、今後の課題とする
こととした。
3-6 授乳婦
授乳婦の推定エネルギー必要量は
推定エネルギー必要量(kcal/日)=妊娠前の推定エネルギー必要量(kcal/日)
+授乳婦のエネルギー付加量(kcal/日)
として求められる。
72